僕たちは、移動することができる。歩いたり、自動車や飛行機だったり、好きな場所へ動き回ることができる。寒かったら、暖かい場所に行ったりね。 でもさ、木や草たちは、生えているところから動くことができない。どんな過酷な場所でも、そこでじっと自分のできることをしています。尊敬しちゃうね。彼らが移動するためには、太陽の力をたっぷり浴びること。そろそろ、春がやってきます。雪が解けて一気に命がみなぎる春が待ち遠しい。 甲斐信枝 さく

赤毛のゾラは、街の近くの古いお城を隠家に、仲間たちと徒党を組んで、食べ物を盗んだり、大人を騙したりする、みなしご5人のリーダーなんです。12歳くらいの女の子。お父さんもお母さんもいないし、頼りになる親戚も誰もいない。もちろん住むところもありません。ゾラの仲間たちは、戦争や病気、事故で両親が亡くなったり、自分の親に家を追い出されたり、みんな帰るところのないこどもたちです。彼らは、彼らなりの正義感を持って、助け合いながら暮らしていました。こども同士でね。大人は、彼らを「ゴロツキ」とか「刑務所行きだ！」とか言いながら、どんどん彼らを追い詰つめていきます。彼らを助けてくれる大人は少ししかいません。 クルト・ヘルト 作 / 酒寄進一 訳 / 西村ツチカ 画

電車に乗ってトンネルをくぐります。トンネルを抜けると、みんな姿が変わってしまいます。変身とも違って、新しい自分に気が付く、みたいな絵本なのですが、なんというか、じわじわくるんですよ。おもしろさが。 片山健 さく・え

誰でもするけが。血が出たり、痛かったりするとパニックになってしまうもの。そんな時はこの絵本。こどものための応急処置を、わかりやすく描いた絵本です。福音館書店で出版された本ですが、刊行30周年にあたり、傷の処置法を現代医療に合わせてリニューアルされました。 やまだまこと ぶん / やぎゅうげんいちろう え

いしげまりこ ぶん / わきさかかつじ え

征矢清 さく / 林明子 え

増田純子 作

みえすいた嘘っていうのは、みんな分かっているけど、バカらしいから「それ、嘘！」とは言わない。でも、研ぎ澄まされた嘘っていうのもあって、そういう嘘は一瞬迷う。そして、信じるか信じないか決断を迫られる。嘘っぽいことは本当っぽく語られて、本当っぽいことは、嘘っぽく語られたりすると、コロッと騙されたりする。それに、本当のことには、いろんな隙間があって、限りなく嘘に近い本当のことだったり、嘘は言ってないけど、本当のことも言ってないとかいうことになっていたりもする。〈本当と嘘〉を〈現実と空想〉に置き換えてもなんとなく通じる。児童文学は、現実と異世界が混ざり合う基点があって、その両方を行き来する物語が多い。でも、タイトルや日米恐怖協会という著者名からしてユーモアたっぷりなこの物語は、行き来ではなくて、現実と異世界の〈あいだ〉に立って、両方の世界のことをどっちのことかわからないように語る。そして、基点は愛おしいこどもへのまなざしと、親としての素直な願い。それが、ありのまま語られているところがたまらない。 小沢健二と日米恐怖学会