庭しんぶん


私たちは、こどもと大人に向けて毎月新聞を発行しています。名前は「庭しんぶん」といいます。私はかつて、それはそれはとても小さなこどもでした。両親や身近な大人の助けを借りて、失敗を重ねながら果敢に世界を味わい、この社会で生きていく方法を身につけてきました。そして、今はすっかり大人になりました。こどもを育てるようになって、私はこどもの心をどこかに置きっぱなしにして大人になろうとしていたことに気がつきました。目の前のこどもの気持ちがわからない。今これから世界を味わい、たくさん失敗して成長していくこどもに、失敗しないように世話を焼いたり、遊び心を挫いてしまったり、ついつい、大人っぽいことばかりを言い聞かせています。自分も小さなこどもだったはずなのに!

庭しんぶんは、おもちゃと絵本の専門店「ろばのこ」が毎月発行していたお便りを私が引き継いだことから始まりました。それは、ろばのこが庭ビルに引っ越してきた2017年7月のこと。私とデザイナーの佐々木信とふたりで「新聞をつくろう」ということになったのでした。私は、編集長の藤田進といいます。

庭しんぶんは、地球や社会をどのようにこどもと分かち合うかを模索しながら、毎月発行しています。この地球上の4人に1人はこどもです。私たちは、庭ビルの周りで起こっていること、起こって欲しいこと、そして新しい発見や気づきを、身近なこどもたちに向けて伝えたいと考えています。私たちの社会にはこどもが必要です。好奇心と探究心の塊のような彼らが、この世界でドキドキ、ハラハラしながら、毎日を楽しめること。それが、庭しんぶんの願いです。

私は、新聞記者ではなかったのですが、庭しんぶんを作っているので、そのうち新聞記者を名乗ってもいいのかもしれません。カレル・チャペックの『カレル・チャペックの新聞讃歌』という本の冒頭で、新聞記者の仕事について書いてある文章があります。この文章を書きながら、ふと思い出したのでご紹介して、庭しんぶんの紹介とさせていただきます。

……私は新聞記者です。/私は自分のことをそう思っています。その仕事を片手間にやっているつもりはありません。私は文学に対するのと同様に真剣に取り組んでいます。私がすべての作家に期待することはみなが新聞記者の修業を積まれるようにということです。それはすべてのことに興味をもつ習慣を身につけるためです。文学についての私の危惧は作家が自分の閉鎖的な世界にこもりきりになっているのではないかということです。作家は自分が今、その一員として生きている世界の中にいるべきです。新聞記者の本分もまた普遍性の探求に邁進することです。すべてのことを体験しなければならないしすべての世界に関心をもつことが必要です。世界のほんの一部のことだけではだめです。チェスタートン、ウェルズ、ショー彼らもまた新聞記者でした。

1931年    カレル・チャペック
『カレル・チャペックの新聞讃歌』青土社