誰でもないのに誰でもないから何にでもなれる、それがこんとんなんだって。こんとんには目も耳も口も鼻もないけれどなんだか幸せそうです。自分の目で見て、聞いて、嗅いで、話す。当たり前のことだと思っていたけれど、実は大変なことなのかもしれません。 夢枕獏 文 / 松本大洋 絵

ふと気がつくと、見たことのない森に迷い込んじゃったことありませんか？ ぼく、あるんですよ。なんか考えごとをしていて、ふと気がつくと知らない場所にいることが。夢の中で来たことあるような、いやずっと前からいるような。白昼夢っていうんですかね。 末吉暁子 作 / 林明子 絵

どことなく不思議な物語。その不思議さを読みながら考えました。プロイスラーといえば、『大どろぼうホッツェンプロッツ』。比較すると本作はずいぶん感じが違う。「あれ？ ここどうなってるんだ？」という物語の因果関係の曖昧さ、説明されていない余白がたくさんある（ドイツの文化や風習を知らないからかもしれませんが……）。だけど、ぐんぐん読み進めてしまうんですよね。そこが不思議の原因。でも、細かい辻褄なんてのは、頭の中で理屈っぽく理解してるだけで、僕たちの日常にはもっと曖昧模糊としたリアリティがある。そういう生々しさが描かれているから、引き込まれちゃうということなのかもしれません。そういえば、昔話とか伝承も同じような不思議さがあるなぁ。 プロイスラー 作 / 中村浩三 訳

ぬかりなく用意周到な大どろぼう。読んでいると本当に怖くなってくるんですけど、息子と一緒にドキドキしながら読みました。続編もおすすめです。 プロイスラー 作 / 中村浩三 訳

人間が地球に存在するはるか昔から、地球にはいろんな命があって、関係し合って、そして季節が巡っていました。まどみちおさんの言葉が、じんわりと染み込み、途方もない時間の流れに思いを巡らせます。 まど・みちお 詩 / 柚木沙弥郎 絵

地面の上は、なにやら騒がしいね。地面の下も動き始めました。ねっこぼっこは春の服をつくっています。冬が終わりに近づき、太陽が力を取り戻してきました。地面が少しずつ暖かくなって、ねっこが動きだしています。春になったら、木々はねっこを大地にしっかり張り 巡らせて、たっぷり水を吸い上げます。そして、葉っぱの赤ちゃんを大きく育てるんだ。ぎゅっと縮こまって小さくなっていた体を大きく広げて、冬のあいだに溜め込んだ息をたっぷり吐き出すんだよ。 ジビュレ・フォン・オルファース 作 / 秦理絵子 訳

この絵本を読んでいると、こどもが「もこっ」って動くんです。「ことば」と「絵」だけで、こどもの体を動かしちゃう何かがこの絵本には隠されているわけです。実は、大人だって恥ずかしいと思ってグッと我慢しているだけなんですけどね。 たにかわしゅんたろう さく / もとながさだまさ え

感じたことを素直に表現するがまくんと、がまくんの感じたことをそのまま受け止めて、付き合ってくれるかえるくんの物語。自分の感じたことや思ったことを、素直に表現し合える関係性があるかないかは、その人の人生にとって大きな違いがある。そういう相手がいるってこと。それが「自由」ってこと！ がまくんとかえるくんはその自由がとても大切だと教えてくれる。そして、自由にはセンスのいいユーモアが必要なのだということもね。 アーノルド・ローベル 著 / 三木卓 訳