Q、65歳になった春義さん。 65歳ってどんなですか?(30代女性)
A
1日1日、1年1年の積み重ねで65歳になりました。けれども自身は64歳の時と少しも変わらない。60歳の時とも変わらない。いや、33歳の頃からほとんど変わっていないように思います。皆さんも、いつごろから自分というものを考えましたか? 積み重ねられた時間で65歳にはなるけれど、今の僕自身をつくったのは、両親をはじめ妻や家族、友だち、仕事で出会った人たち、遭遇した様々な出来事です。それらの根本にあるのは命と生きる場所を与えてくれた神様で、僕はすべてに感謝をしています。 さて、この「感謝」という言葉ですが、僕が尊敬する佐々木正美先生に『あなたは人生に感謝ができますか?』(講談社)という著書があります。昨年最も影響を与えてくれた本でした。 65歳はどんな年齢かと問う人は、人生のまとめ、人生を評価する時期と考えているでしょうか。そうだとすれば、この本にはその答えが書いてあります。老年期の課題は「人生に感謝ができること」だと。
今の僕は、それを目指して1日1日を積み重ね始めています。まとめはこれからです。これから出会う未知なるものがあります。きっと病の辛さや衰えによる体の不自由さに見舞われるでしょう。そして死を迎えます。スーザン・バーレイの絵本『わすれられないおくりもの』では、死をトンネルのように描いて、アナグマさんはそこを走り抜けるように向こうの世界へ行きます。あのイメージに賛成ですが、それは扉のようであるかもしれない。とにかく死の向こうにあるもの、これが神様からの最大のプレゼント。想像を超えたものであることは疑いの余地なしです。最大の未知に遭遇しようとする僕は期待と不安を抱えています。その僕を支えるのは、今までの僕です。いいえ、今までの僕をつくってくれた人たちであり、出来事のすべてです。特に僕と良い関係を結んでくれた人たちは同伴者です。扉の向こうで会いたい人達です。65歳になった僕は、その人達に「ありがとう」と感謝を述べます。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、児童館に行きたがらない小学1年生。 何かいい方法はありませんか? (30代女性)
A
お母さん、お父さん、まずはお子さんと話をしましょう。「この頃、困っていることや、何か面白かったことあった?」と漠然とした聞き方で、こどもの話をじっくり聞いて下さい。こどもは話したいことが一杯あっても親が忙しそうだと遠慮します。そんな会話の中で児童館のことも聞けたらいいです。面白い遊び道具がないとか、気の合う友達がいないとか、いろいろ出てくるかもしれません。それだけでもお子さんとしては、重かった気持ちが軽くなります。
次に親ができることをいくつかあげてみましょう。1つ目は、児童館の指導員の方と少しでも良い関係を築くことです。指導員のどなたか1人でもいいから名前を覚え、共通点を探して話題にすることです。こどもの社会性は親との良い関係を結んでいる他の大人との間で育ちます。安心できる大人たちの関係の中にいることが大切です。2つ目は、1人でもいいから気の合う友達ができるようにすることです。気の合いそうな子を、お休みの日にお家によんで遊ぶとか、どこかに一緒に出掛けるとかすることです。毎日の放課後の2,3時間、夏、冬休みの間の数時間を過ごす場所で気の合う人がいれば、楽しい時間になりますが、いないと大変孤独です。3つ目はお子さんの興味のあることを児童館で出来るように一緒に考えることです。こどものための施設ですからこどもが健やかに機嫌よく過ごすのは当然のことではありますが親も協力することが必要です。ささいなことでも提案すれば責任が伴います。面倒くさいと思うかもしれませんが、指導員の方はそのように関わってくれることを歓迎しています。
10年ほど前、我が家の末っ子が通っていた学童保育で、ワークショップ用のカプラを持って行って1週間遊んでもらったことがありました。その事があって指導員の方と親しくなりました。もし何かしら提案できれば、消極的な対応から積極的な対応へと変わります。お子さんともそのことで話し合えます。小学校の数年間をどのように過ごすかは、大変重要です。気の合う友達の親同士も繋がり合って楽しいことを提案できるといいですね。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、4歳と1歳のこどもがいます。寝る前に絵本を読みたいのですが、下の子が邪魔をして、上の子に絵本を読めません。何か良い方法はありますか?(30代女性)
A
うーん、これは難しい!1歳のこどもは歩けるようになると、意志をしっかり持ち、なんでもできると思っているようです。また兄弟の上の子がしていることは自分もできると思うし、上の子がしてもらっていることは当然のように要求します。こんな1歳児がいて、4歳のこどもに絵本を読めば、相談者の現状になるわけです。それを承知で良い方法をひねり出してみます。
第1に、絵本は毎日、同じ時間に読む。明日も必ず、◯◯をした後で読んでもらえることが分かるからです。あなたの家では寝る前なのですね。パジャマに着替えた後でとか、歯磨きが終わってからというように誘ったらいいと思います。 第2に、お子さんの座る場所を決めます。あなたの右の膝に1歳のお子さん、左の膝に4歳のお子さんというようにします。場所が決まると安心です。 第3に兄弟それぞれの絵本に別々の分かりやすいマークを貼りましょう。1歳のお子さんにはヒヨコのマーク、4歳のお子さんにはクマのマークなどです。初めにヒヨコのマークの貼ってあるお気に入りの絵本を1歳のお子さんに見せて「このマークは◯◯ちゃんの絵本よ。お膝で読もうね」と右の膝に誘います。同じ本を「もう1回?」と聞きながら、望んだら3回か4回読みましょう。満足してくれたらしめたものです。次にクマのマークの絵本を、1歳のお子さんに見せて、「これは◇◇ちゃんの絵本だから、◇◇ちゃんに読むね」と言って4歳のお子さんをあなたの左膝に座らせて読みます。これを2週間、毎日続けて下さい。 明日も必ず読んでもらえること、自分の座る膝が決まっていること、わかりやすい自分のマークが絵本に貼ってあることなど、視覚的に分かりやすい状況を作ることで、1歳のお子さんが納得してくれるといいのですが。是非やって見て下さい。2週間継続すると大抵上手く行きます。それでもダメだったときは、もう一度ご相談ください。成功を祈ります。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、春義さんが一番好きな絵本は何ですか? (庭しんぶん編集部)
A
嬉しい質問です。答えは、『ぶたぶたくんの おかいもの』(福音館書店)です。 どれくらい好きかっていうと、「ぶたぶたくん」と聞いただけで嬉しくなる。表紙を見ると「やっぱりこれが好き!」と思う。本文の奇妙な始まり方も傑作だと毎回思う。『絵本・子どもの本 総解説』赤木かん子著のおすすめ本400冊余りの中でも、『ぶたぶたくんの おかいもの』は見開き2ページで取り上げる特別扱い。それが僕の自慢という具合でとにかく惚れ込んでいます。
好きな理由は、自分の気持ちが主人公の『ぶたぶたくん』とぴったり重なるからです。「ひとりで おかいものにいける?」というお母さんの言葉に、ぶたぶたくんは、「いけるさ」と答え、初めてのお使いに緊張しながらも意気揚々と出かけるところ、パン屋のおじさんに「かんしん かんしん」と何度も褒めてもらって嬉しそうにしているところ、八百屋の前でかあこちゃんと会って楽しそうにおしゃべりしているところ、お菓子屋のゆっくりおばあさんに待ちきれない様子で「ぼく きゃらめる」と言っているところ、帰り道「ほんとうに このみちを いくと、ぼくのうちに いくのかしら」と心配になるところ、お母さんの姿を見つけて「おかあさん」と言ってかけ出したところ等々。
最後のページの地図と、ぶたぶたくんの黄色いリボン、かあこちゃんの赤いリボン、こぐまくんの青いリボンは、おかいものごっこをするこどもたちへの作者のプレゼントですね。作者の土方さんは1970年に70歳でこの本を作りました。僕も土方さんのような70歳になりたいと思います。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、サンタクロースはお父さんですか? (小学1年生男子)
A
100年後のバージニアへ
はじめに、小学生にぴったりの2冊の本を紹介します。1冊目は『サンタクロースってほんとにいるの?』(福音館書店)、2冊目は『サンタクロースっているんでしょうか?』(偕成社)です。僕の娘が1年生の時、どうしてもサンタクロースに頼みたいプレゼントがあって手紙を書きました。けれどもその日サンタクロースは来ませんでした。娘は来なかったサンタクロースを「次の朝まで待つ」、と言いました。それは1冊目の本に、「来ない家もあるのは、病気の子のところで朝までいたから」とあったのを覚えていたのです。家には1度もサンタクロースが来たことはありませんでした。それでも娘はサンタを待っていたのです。
2冊目の本は100年前にニューヨークに住むバージニアという8歳の女の子が、お父さんに質問したら、「ニューヨーク・サン新聞に聞いてごらん。新聞社がいると言ったらそりゃたしかにいるんだろーよ」と言ったので、バージニアは新聞社に質問しました。その答えが本になったのです。君の質問はバージニアとは少し違います。友だちが「サンタクロースはお父さんなんだよ」と話しているのを聞いて、君の中に生まれた疑問かもしれません。君は庭しんぶんに聞けば、お父さんか、本物のサンタクロースか答えてくれると思ったのですか? 確かに、こどもを持っている大人はサンタクロースになりたがります。こどもを喜ばせたいからです。
ここで2つの方法を教えます。どちらかを選んでください。1つ目は、今年もサンタクロースが来ると信じること。2つ目はお父さんに、「お父さんでしょ?」と聞くこと。君にその勇気があればです。私たちは見たり、聞いたりして確かめるわけですが、信じるという方法でなければ確かめられないことがあります。君自身の問題です。これが君への答えです。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、どうして大人は遊ばないんですか?(小学6年生男子)
A
小学6年生の君は、どこで、誰と、何をしている時が「遊んでいる」ことなのでしょう? 1人でゲームするとか、友達とサイクリングに行くとかでしょうか? そもそも「遊ぶ」ってなんだ?
さて、『あな』という絵本があります。主人公は男子で名前は「ひろし」です。書き出しが「にちようびの あさ、なにもすることがなかったので、ひろしは あなを ほりはじめた。」とあり、スコップを持っている「ひろし」が描かれています。ページを開いていくと、黙々と穴を掘っている「ひろし」のところにお母さん、お父さん、妹、友達がやって来てあれこれ言いますが、適当に答えて掘り続けます。「ひろし」は今までやってみたいと思って、やってこなかった穴掘りをやり遂げます。誰かに頼まれて始めたのではありません。やりたいと思ったのはひろしです。深く掘ったところでイモムシに出会います。「ひろし」は「イモムシ」と心が通じます。そこで掘るのを止めて、穴に座り込んで壁に触り、匂いを嗅いで自分の穴を感じます。穴から上を見上げると青い空に蝶々が1匹飛んでいるのが見えました。「遊ぶ」というのはそういうことだと思います。
もう一度聞きますが、君は遊んでいますか? こどもが自分のやりたいことをやりたい時に、必要な道具を使ってやるというのは、なかなか出来ないことだと僕は思っています。親や、先生など大人の見守りが必要だからです。では大人はどうでしょう。大人は見守られなくていいのでこどもよりもっと遊べそうです。実際、大人は遊んでいます。自分がやりたいと思うことをしている時の大人はみんな遊んでいるのです。君が遊びだと思ったこともないことで大人は遊んでいます。僕が今、君の質問の答えを考えていることも遊びと言えます。遊びは真剣です。
君は庭しんぶんを読んでいるでしょう。写真も見てください。この新聞を作っている大人たちはみんな遊んでいると思いませんか。例えば庭ビルに来て庭師の康子さんと会ってみてください。大人もたくさん遊んでいるのだとわかります。遊んでいる人は自分ばかりでなく周りの人をも楽しませてくれます。君もいずれ大人になりますが、庭ビルの大人たちと付き合っていれば遊びを忘れることはないと思います。 でも君の観察した通り遊ぶことを忘れたように見える大人もいます。新しい出来事や面白そうなことに心が動かなくなってしまった人。自分以外の誰かが決めたことをするために1日の殆どの時間を使っている人です。大人の中には遊び以外のことで頭も心も一杯になっている人がいます。そういう人の近くにはあまり行かない方がいいと僕は思います。これが君への答えです。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、どうして結婚するんですか? (小学6年生男子)
A
「どうしてセックスするんですか?」ではなくて、「どうして結婚するんですか?」の質問でしたから、すごく難しくて何回も何回も書き直しました。僕が結婚のことを考えたのは、今の君よりももっと後で高校生くらいだったと思います。それは僕の両親のような結婚はしないということでした。こどもの僕から見て両親は仲良く見えませんでした。むしろいつも張り合って、けんかに近い状態でした。父が母を叩いたのを見たこともありました。だからそのように考えたのだと思います。でもそれは僕も結婚するようになると思ったからです。どうしてそう考えるのか。これが今回の質問ではないかと思いました。
僕は結婚して38年経ちました。今、自分の結婚を振り返って君への答えを探しています。結婚して妻と一緒にご飯を食べたり、寝たり、好きな音楽を聴いたり、旅行したり、昨日のことや将来のことを話したりして過ごしてきました。僕は幸せだったなぁと実感しています。それは「ありのままの藤田春義」という人間を受け入れ、話し相手になり、寄り添ってくれた人がいたからです。「藤田春義」は少年の時代に女子を意識し始め、同時に自分は男であることを意識しました。また、親や兄弟や親戚、学校の先生や同級生、近所のおばさんやおじさんと出会い、自分の性格の良いところ悪いところや恥ずかしいところ、得意なこと不得意なことも少しずつ分かって来ました。自分という人に出会って分かるのだと思いました。妻と出会った時に、「ドキドキ」と同時に、この人の前なら「ありのままの自分」でいられると感じました。この人と「ずーっと一緒に居たい」と思いました。
38年経って僕は、この人から喜びをいただき、この人を喜ばせることに喜びを感じて過ごしてきたことに満足しています。僕が男であること、性格の悪いところ、恥ずかしいところ、不得意なこと、落ち込むと中々立ち直れないところなどなど、良いも悪いも受け入れて共感してくれる人が僕の人生の助け手でした。人という字の成り立ちを知っていると思いますが、僕は「ノ」で妻はそれを支える方だと思っていました。僕はそのおかげで「人」として生きてこられました。これが君への答えです。
藤田春義(ふじたはるよし)
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Q、忙しさに追われて、5歳の息子と落ち着いて向き合う時間が取れません。心が通った時間を毎日の中で確保したいです。何か良い方法があるでしょうか?(30代男性)
A
「忙しいから仕方がない」とあきらめてしまったり、「自分は経済的に支えるのが役目だ」などと言い訳しないで、5歳の息子さんと心が通った時間を毎日確保したい、もう、その切実な気持ちだけで十分と思うほどですが、「心が通う」をキーワードにして考えてみました。まず、お父さんではなくこども自身の喜びと満足を優先することです。そして、相談者の忙しさを考えると短い時間でできることを考えましたが、たまには長い時間をかけて楽しんで欲しいです。
第1の提案。5歳の男の子ですから背が伸びたり、体重が増えていることを褒めてもらうと喜びを感じます。そこで「たかい たかい」を提案します。帰宅してすぐにでも「◯◯君、たかいたかいしようか」と誘います。それに応じて両腕を差し出してくれたら、両脇に手を差し入れ、しっかりと支え、「たかいたかいたかい」と言いながら、自分の目線よりも高く上げます。岩手県遠野市でわらべ唄の伝承者である阿部ヤエさんは、「たかい たかい」には4つの効果があると言います。①しっかり支えてもらう事で信頼感が育つこと、②いつもと違う目線で関わる楽しさを味わうこと、③高いところに慣れること、④成長を喜んでもらうこと。この中でもこどもの体をお父さんの腕でしっかりと支えることは信頼感が育つうえで特に大切です。ぽーんとこどもの体を放るようなことは絶対にしないこと。どんなに喜んでいるように見えても一瞬の不安と驚きを感じますから。また、こどもの体を降ろす時には「この間よりも大きくなったね。重たくなったね」と言ってあげると、自分の成長を確認し喜びます。ほんの30秒ほどのことですが、お父さんも信頼されることと、成長を確認している様子から大きな喜びを感じます。
第2の提案は朝の15分の散歩。朝がだめなら夕方でも。近くの公園まで、あるいはご近所を一回り。「少し早く起きて明日の朝から2人で散歩しよう」と誘います。予めこの時間までと決めておきます。目的地に行くためではなく、散歩そのものが目的です。こどものペースにとことん合わせます。支度を急かしたりしない。しゃがんでありを見つけたら隣にしゃがんで見ます。こどもが先に行ったら角で待っててねと約束しておきます。近所のお庭のお花を見たり、すれ違う人と挨拶したり、毎日同じコースを辿っても楽しいです。一回りして「ただいまー」と帰ってくるまで15分、物足りない感じがしますけど開放的で嬉しい時間です。「明日もまた行こうね」と約束します。
第3の提案は絵本を読むこと。5歳のこどもは10章ほどに分かれている単行本「エルマーのぼうけん」などを楽しめるようになります。1日に1章ずつお父さんが読むと決めます。朝でもいいし寝る前でもいい。あるいは曜日を決めてもいいでしょう。とにかくお父さんに読んでもらわなければ進まないわけです。読み始めるには覚悟が要りますが、読み終わった時はとても嬉しいです。お話が2人だけの共通体験になり、それが嬉しいのです。
以上3つの提案のいずれかでも相談者の現実に沿うものであることを願います。お父さんが忙しい今が、こどもが育つ一番大切な時間でもあります。この時を失うと取り返せません。5歳の息子さんが将来描く父親像はこの時につくられるのではないかと思うのです。応援します。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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