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Q、人間はどうして戦争するんですか?(小学3年生男子)
A
まず、国と国の戦争について考えてみます。国というのは、そこに住んでいる人たちが安心して暮らすことができるように互いに助け合う仕組みときまりをつくっています。それぞれの国は土地と持ち物と自分たちの命を守るための方法を決めています。その国によって守り方の方法は違います。日本は他の国ともめ事が起きて、土地や持ち物や自分たちの命が守れなくなるようなことが起きても戦争という方法はとらないと決めています。
こども同士で遊び道具の取り合いになったり、仲間同士で遊び場の取り合いが起きた時、上手く話し合いができればいいのですが、それが上手くいかないと言い争いになり、さらには力づくになってひどいケンカになる場合があります。相手が傷つくようなことを言ったり、身体を傷つけることをしてしまいます。武器になるようなものを持っていれば死ぬことがあるかもしれません。
国同士のもめ事で武器が使われたら、多くの人が死ぬことになります。国によって守り方は違いますと書きましたが、武器を持ちながら、相手の国が攻撃してきたら自分の国を守るために武器を使ってもいい、と決めている国もあります。また、たくさんの武器を持っていたら相手の国は攻撃してこないだろうと、強い武器を作っている国もあります。戦争を始めるとき、国は必ずその理由を考えます。相手が攻撃してくるからとか、自分の国を守るためには仕方がないとか。私たちの方が正しいとか。
ぼくは、人と人が言葉でも身体でも傷つけ合うのは本当にイヤです。ましてどんな相手でも殺すのは絶対イヤです。殺すというのは強い意志の力がないとできません。たとえ家族を守るためと言われてもイヤです。どうしようもない場合が起きたら、殺される方を選びます。殺されても殺す方にはなりたくないと決めています。
だから戦争をしないというきまりはとても大切です。そして、あきらめないで話し合いで解決することが大切です。人が言葉を持っているのは話をしてわかり合うためです。「こどものとも」をはじめに作った松居直さんは、「言葉が伝わらなくなった時戦争が起きる。だから、お隣の国の人たちを知ることが戦争を起こさないために必要だ」とおっしゃっていました。質問を寄せてくれたあなたにお願いがあります。どうか私たちの国や他の国がどのようにして自分たちを、そしてお互いを守るためにどんなきまりをつくっているかを調べてみてください。さらにあなたはどうするか考えてみてください。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、「どうして、私たちはこどもで、お母さんやお父さんは大人なんですか? 何がちがうの?」(5歳 / 女の子)
A
ひとつ目の答えです。大人は女の人も男の人も体の中に赤ちゃんが生まれるための仕組みができます。あなたのお母さんもこどもの時がありましたが大人になって、赤ちゃんが生まれる仕組みができて、お父さんと結婚してあなたが生まれました。あなたは、赤ちゃんだった時のことを覚えていますか? その時はお母さんのおっぱいを飲んで、ハイハイをしていましたね。そして、今は早く走ることも、いろんなものを食べることも、おしっこやうんちをすることも、服を着ることも、高いところに登ることもできるようになりました。でも、赤ちゃんが生まれるため仕組みは大人にならないとできません。だから、あなたはまだこどもでお母さんとお父さんは大人です。
ふたつ目の答えです。この質問を僕の9歳の友達にしたら、「こどもは小さくて、一人じゃ生活できない。大人は勉強して一人前になって、自分で考えて一人で行動できる。」と話していました。その友達は11月に横浜から遊びに来ましたが、飛行機に乗る時も、降りてからも大人の人に守られて千歳空港まで来ました。こどもは大人に守ってもらわなくてはなりません。あなたも同じです。だからあなたはまだこどもでお母さんとお父さんは大人です。
あなたは、お母さんやお父さんと自分は違うと気付きました。赤ちゃんではなく、大人でもない。5回目の誕生日をお祝いしてもらって、しかも女の子。違うところに気付くと同じところにも気づきます。アイスクリームが好きとか、タンポポのお花が好きとか、その一つひとつはあなたと他の人を結ぶ大切なものです。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、4歳児と2歳児の母です。子だくさんの家庭に憧れていましたが、実際に母になると自分の器の小ささに自身を無くすこともあります。また、こどもたちを取り巻く環境、地球温暖化や、災害、保育士や教師の不足、低賃金や不景気などへの不安が消えません。こどもたちは「幸せだった」と一生を終えることが出来るのでしょうか?子を産み育てることに必要な「覚悟」とは何だと思いますか?
A
「覚悟」という言葉にあなた自身の「存在の重さ」を感じ、「ドキン!」と鼓動が一つ大きく打ちました。私の好きな『のえんどうと100にんのこどもたち』甲斐信枝作(福音館書店)には、さやの中のこどもたちがお母さんに外の世界を尋ねる場面があります。「母さん、お部屋の外には何があるの?」「山や川や畑が広がっているの。大きくなったらみんな見られますよ」。こどもたちは大きくなる日を待ちました。その言葉をこどもたちは希望にしました。しかし、質問者が今見ているのは先行きの不安、そして少々自信をなくしています。のえんどうのお母さんはその後、お日様の促しで、100人のこどもたちを茶色い服に着替えさせます。それは独り立ちのための支度です。それが今回の答えのヒントです。独り立ちに必要な支度とは何でしょう。それを私たちはどのようにして手渡すことができるのでしょう。
わが家では、「喜ぶものと一緒に喜び、泣くものと一緒に泣く」をモットーにしてこどもたちと生活してきました。一緒にごはんを食べ、絵本を読み、おやつを作り、カードゲームをし、散歩し、家族以外の人と出会うための旅行をしました。また、2人だけの時間を意識して持ちました。それは当たり前の生活です。私たちはその生活を楽しみました。こどもたちがその場とその関係を楽しむことは、自分がそこにいても良いと思える自信になります。この自信が、先行きの見えない明日を生きる力になります。児童精神科医の佐々木正美先生は「理由なき自信」と言っておられました。未来は「未だ来ていない」という意味です。そして、こどもたちに託されています。
のえんどうのお母さんは最後に、「後はお日様よろしく」とお日様にゆだね、丘の土に静かに横たわりました。私はこの場面がとりわけ好きです。自分の役割を為し終えた清々しさが伝わります。「喜ぶものと一緒に喜び、泣くものと一緒に泣く」そして「ゆだねる」。これが私ががあなたへ伝える「覚悟」です。もうひとつ、冒頭に感じたあなたの「存在の重さ」については、いつかお話したいと思います。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、はるよしさんにとって、おもちゃってなんですか? (庭しんぶん編集部)
A
おもちゃは遊びのための道具、あるいは材料ですが、まず遊びとは何かを考えてみます。僕は30年以上前に保育士をしていたことがあります。その時はこどもの近くにいたのに「遊び」についてよく考えていませんでした。保育士を辞めて、こどものとも社に勤めて間もなく、こどもの生活と遊びをテーマにした樋口正春さんの保育者向け講演会に参加しました。お話しの中で日々こどもがしている活動について、なぜそれをしているのか?と問われました。その問いは自分の6年余りの仕事に対する深い反省を呼び覚ましました。体操も歌も砂場の活動も。なんのためと問わず、こどもの頭の中で描かれている事柄、手や足や身体が感じていることを深く考えず、漠然と見ていた自分を顧みました。自分のこどもへの理解の深さの分しか理解できないことが、今はわかります。こどもの考えていること、感じていることをどれだけ同じように考え、感じ取れるかが大切であることも。遊びについて言えば、砂場で山を作っているこどもたちは、考えていることを言葉にしながら、工夫し、失敗を重ねながら、砂山を高くし、トンネルを掘り、穴を掘って水を流し池を作る。目的を持って言葉を使い、身体を使い、互いの関わりを楽しんでいる。
さて、おもちゃについてはどうでしょう。シロフォン付玉の塔を例にして考えてみましょう。小さな球を穴に入れると、坂道を転がり、最後にシロフォンがチロリロリンと美しい音を鳴らします。おもちゃはデザイナーの持っているこども観、人間観、興味、関心などが形になっています。その意図を言葉では説明しません。こどもは目の前にあるモノと向き合い、面白そうだと思ったら体を動かしてそのモノと関わります。指で球をつまみ、穴に入れ、球を目で追い、音を聞く。おもちゃと関わりながら、言葉が生まれます。「ここに球を入れたら、こうなって、最後に美しい音がする」と。興味を抱いた他のこどもに遊び方を教えたり、一緒に面白そうな遊び方を考えたりもするでしょう。私たちは注意深く見て、こどもがしたいと思うことが実現できるように、様々な意味で環境を整えます。シロフォン付き玉の塔で2時間遊んだという話を聞いたことがあります。一つひとつの玉の転がり方の違いまで観察していたそうです。このようにこどもたちの遊び方がデザイナーの意図を超える場合があるかもしれません。こどもはおもちゃと出会った時、面白そうだと思って近づき、五感を駆使してそれを体験し楽しみます。僕は何百というおもちゃと出会い、デザインの素晴らしさに感嘆しました。そして優れたおもちゃは、面白いだけでなく、美しいと思います。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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▷ はるよしさんに聞いてみよう 一覧に戻る Q、はるよしさんにとって、絵本ってなんですか? (庭しんぶん編集部) A 絵本は僕とこどもを繋ぐもの、結ぶもの、知り合うためのもの。実はこどもとどのように付き合うかはかなり難しいと思っている。赤ちゃんはしゃべってくれないし、3歳くらいまでのこどもの話は良く分からないし、4歳、5歳は自分勝手なことばかり言ってるし、可愛い時もあるけど、やっぱり良く分からない。7人のこどもを授かって、妻と2人楽しみながらこどもたちと過ごせたのは絵本のおかげと言っても過言ではない。ただ読むという行為だけでこどもと繋がれる。こどもは絵本を見て、聞いてくれる。毎日、毎日読んでいるうちにこどもが楽しみにしている場面が分かるようになる。その場面に来るといつものように指を差したり、声をあげたり、ジーッと見入ったりする。だからそのページは少し時間をかけて見るようにする。こうして絵本は僕とこどもを結びつける。 それは、同時にこどもを知ることになる。数知れぬ絵本たちによってこどもの内面を発見する機会を得た。息子が生まれ、ものごころがついて初めて読んだのが『くだもの』 だった。描かれたいちごに手を伸ばして摘まむふりをし、食べるふりをしていた。さらに僕にも食べさせてくれようとする息子を愛しいと感じた。小学校入学のお祝いは妻の実家のある函館まで飛行機で行った。初飛行がプレゼントだ。『とべ!ちいさいプロペラき』は赤い小さなプロペラ機が初めて大空を飛ぶドキドキが描かれている。読んだ後で飛行機に乗るとこどもがプロペラ機のドキドキを感じているのが分かる。『エンソくんきしゃにのる』 は次男に初めて読んだとき「もう1回」に応えて7回も読んだことがある。こんなに好きになる本があるのだと知った。『てんのくぎをうちにいったはりっこ』 は 「ひとうち、ふたうち」とくぎを打つその調子にこどもも体に力を入れているのが分かる。その一体感を今も思い出す。それを楽しんだ四男坊は、なんと大工さんになっている。 『ひとまねこざる』のシリーズは三男坊の誕生日のプレゼントだった。タイトルの前にこどもが自分で名前を書いている。少々長い文章なのだがよく読んだ。こどもが好きだったからだ。主人公のこざるがどんなにいたずらをしても黄色い帽子のおじさんは決して怒らない。それが好きな理由だと何回も読んでいるうちに分かった。こどもによって僕が絵本の本質に出会っている。五男坊は、思い出の絵本を1冊教えてといったら、『こすずめのぼうけん』と答えた。こすずめはお母さんに、塀まで行ったら戻ってくるように言われたのに調子にのって飛び続け、惨憺たる結果となり、お母さんがうす闇の中にこすずめを見つけて連れ帰る話だが、それが最も深く残っているとは知らなかった。20年を経て息子の言葉によって改めて僕はこの本の凄さを知ったのだった。 6人目に生まれたのは女の子。林明子さんの作品の主人公に気持ちを寄り添わせ、憧れを持って見ている娘を発見した。『こんとあき』はその最たるもので、小学校の自由研究ではきつねのこんの人形を作っていた。今も人形は健在で彼女の大切な友達だ。こどもが絵本の世界を現実の中でも楽しむ姿に絵本の奥深さ、こどもの想像力の限りなさを知ることが多々ある。末の息子が4歳の頃『わにわにのおふろ』を読んでいた。夕食後いち早く服を脱いでお風呂場へ行ったと思ったら洗面器をかぶってシャワーヘッドを持って、わにわにになっていたのだ。一緒に絵本を楽しんでいたから、わにわにになっていると分かるのだが、そうでなければ呆れて叱っていたかもしれない。また、かがくのともの『えぞまつ』や『ふゆめがっしょうだん』などは、家でも読んでいたが大雪山を散策する時に必ず持って行き、絵本と実際を比べてみたものである。大自然をこどもと共有できるのは一緒に生きていることを確認する時間でもあった。 古い話になるが、1988年1月号のたくさんのふしぎは『青函連絡船ものがたり』だった。青函トンネルが出来て連絡船が廃止になった年に刊行されたこの本を持って家族6人で最後の連絡船に乗ったのだ。本と同じ十和田丸だった。みんなで本を持ちながら船の中を見学していたら、乗組員の方がそれを見て船長のサインをもらってくれた。「十和田丸船長、山口和雄」のサイン本は我が家の宝物。三男が4歳の頃『のえんどうと100人のこどもたち』を何度も読んでいた。それで僕の大好きな絵本になった。彼が20歳の時ガールフレンドと札幌に来た。夕食の時、絵本の話題になって彼女も同じ年にこの絵本を父親に読んでもらっていたと知り、僕は有頂天になった。この2人が結婚し、そのこどもにこの絵本を読むようなことになったら親子2代に亘って同じ絵本を楽しむようになる。数年後それは夢ではなく現実になった。絵本は僕とこどもだけでなく家族、世代をも繋げ、結び付け、互いを知るためのものになった。このように楽しんだ絵本の殆どは福音館の月刊絵本だ。毎月毎月楽しみにしていたのはこどもだけでなく僕だった。 こどもが小学生になると絵本だけでなく童話や、児童文学を読むようにした。ある日小学校高学年になった長男が夕方帰って来たがひどく不機嫌だった。何か嫌なことがあったのだ。理由も聞かず、「『モモ』を読むから聞くかい?」と言うと、不機嫌な顔のまま聞き始めた。15分ほど読んで「あとは明日にしよう」と言った時にはいつもの穏やかな顔になっていた。ささくれていた心が物語で癒されたのをも僕も体験したひと時だった。この他にも 『エルマーの冒険全3巻』、『完訳ハイジ』、『冒険者たち全3巻』、『ナルニア国物語全7巻』『大草原の小さな家』等々、これらを読んだ日々がこどもと僕のつながりのすべてと言ってもいいほどだ。そして、こどもが僕を絵本や児童文学に繋げてくれた1番素晴らしい導き手だったことを大変嬉しく思っている。 藤田春義(ふじたはるよし) 1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。 はるよしさんに質問する メールに ①年齢、②性別、③質問 を書いて送ってください。質問は、庭しんぶんに掲載されます。※掲載号はランダムなのでご了承ください。 商品を見る 商品を見る ▷...
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Q、春義さんにとって、わらべ唄ってなんですか? (庭しんぶん編集部)
A
わらべ唄は、「人として生きるために必要な知恵」だと思っています。40年ほど前、保育士として働き始めた頃にわらべ唄の研修に参加しました。その時に唄の意味について尋ねたところ、「今はもう言葉の意味は解らないから、解らなくてもいい」と答えられました。私は、意味の解らないことをやる意味はないと思い、わらべ唄を学ぶ気持ちを失ってしまいました。
ところが22年前のこと、露木大子さんという方を通じて岩手県遠野市の阿部ヤヱさんに出会い衝撃を受けました。ヤヱさんの伝えている「伝承のわらべ唄」は全て意味が解るのです。私はそれ以来何度も遠野に出かけ、阿部ヤヱさんから直接教えていただきました。伝承のわらべ唄は熊野の山伏によって、「人として生きるために必要な知恵」を伝えるために、赤ちゃんの時から大人がやってあげるものでした。
例えば、「赤ちゃんのおむつを替える時、黙ってさっさと始末するのではなく、語りかけ、うたいかけることで、赤ちゃんの気持ちを育て、体を育て、人間として大切な羞恥心を伝えることができます」と語ります。私が主催していた育児教室でも、保育士の方の研修会でもこのことを具体的な方法と共に伝えてきましたが、65歳になった今、さらにこの意味の深さに驚かれています。おむつをするのは人間だけです。いずれ下のお世話をされながら最期を迎えます。そう気付いた時、羞恥心を持つことがどんなに必要なことかを知りました。丁寧なおむつ替えをされて育った人は自分だけでなく相手の羞恥心をも深く理解できる人に育つと思います。私はそういう人に最期を看取って欲しいと切に願います。
また、赤ちゃんにするわらべ唄は、目を見ること、体に触れること、語りかけることの3つをいつも一緒にするようにと教えました。教えられた通りにすることで、人との関わり方を身に付けたのです。唄が教えている、言葉の意味と動作の意味が分かるとより深く学びたいと思います。昨年の2月にヤヱさんが亡くなりました。今私は、伝えられたものを大切に守り、伝えたいという思いを強くしています。関心をもたれた方は、『「わらべうた」で子育て 入門編』(福音館)、『「わらべうた」で子育て 応用編』(福音館)を読まれること薦めます。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、父親の仕事の都合で2〜3年おきに引っ越しして、転園・転校してきました。小学校高学年、中学生になり、難しい年頃、親も不安です。転校を控え、こどもにどんな言葉をかければよいですか?(40代女性)
A
親も子も転勤の度に、自分なりのやり方で新しい住居、土地、人間関係に馴染む方法を身に付けてきたと思います。それは結構たくましいことだったと思います。けれども「難しい年頃」を迎えたところに今回の質問のポイントがあります。今まではこどもが新しい環境に馴染めず不安になったり、緊張した人間関係の中にある時、私がいるから大丈夫と言える自分がいたと思います。ところがこの次は今までとは違うと思っていますね。その予感は当たりです。「難しい年頃」とは、自分の中に他の人には絶対に知られたくない秘密を持つことです。また、自分と同調できる人を強く求め、反対に同調できない人とは関係が築けないことが多くなります。それは親密な関係を作る条件でもありますが、親からすれば「一体何考えてるの? この子は」ということになります。この年頃での転校ですから、親の不安は当然のこと。
さて、ここでちょっと深呼吸をして、お茶の時間にしましょう。美味しいおやつも用意します。誰か近くに居たら誘いましょう。ポットに熱いお湯を入れて……あなたが出来ることは、こういう時間と環境を作ることではないかと思います。意識的に作るのです。そうしてこどもから話し始めることに耳を傾けましょう。「ほーぉ」「なるほど」「そうなんだ」「へー! 」と相槌を打ちます。こんな時間を週に1、2度作れたらいいのではないかしら。結構大事なことを話してくれるようになります。こういう時間に 「お母さん、あなたのこと心配しているよ」と伝えられたらいい。僕はそれで十分だと思います。本当に自分を心配してくれる人がいると思えることが、この年頃には心のブレーキにもなり、エンジンにもなります。転校に伴う友だちとの別れの辛さを引きずりながら、その気持ちを切り替えるのは自分自身の中ですること。また、新しい環境と人間関係に向き合う勇気も自分の中で奮い立たせるもの。だから、あーだ、こーだと言わず、ゆったりと構えて「さあ、美味しいお菓子とお茶をどーぞ!」と言ってくれる人がいればそれで十分!
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、大人はどうしていつも偉そうなの? (小学1年生男子)
A
こどもはよく喋るし、じっとしていないから、大人はいつも「静かにしなさい」と言う。それが偉そうに見えるのかな? こどもに比べると大人は力が強いし、身体も大きいし、いろいろなやり方も知っているから、こどもが何かをしようとしている時や、こどもが自分でできることにも、口を出したり手を出したりする。だから偉そうに見えるのかな? それとも反対に、大人に「自分でやってみろ」って感じで見られると、偉そうに見えるのかな?
大人がこどもに偉そうにしないで付き合うのは実はなかなか難しくて、こどもが本当に手伝って欲しい時にだけ「手伝ってもいいかい?」と聞いてからすればいいと思う。それに「静かにしろ!」ではなく、「今から◯◯まで静かにして欲しいのだけれど」と頼めばいいと思う。君はどう思う? ここまで読んで偉そうだなと思ったら、偉そうにしている大人に、この新聞の「はるよしさんにきいてみよう」を見せて下さい。そして、自分の気持ちを話して、大人の気持ちも聞いてみましょう。良い話し合いができるといいですね。そう言う僕も、自分で言った通りにはできない普通の大人です。君がこの質問をしたことを忘れないで大人になってくれたら、この答えが君の役に立ったことになるので嬉しいです。
そうそう、この間小学2年生と6歳の男子2人を連れて丸駒温泉の露天風呂に行きました。2人はすぐに泳ぎ始め、潜って小石を拾いました。僕は足でお湯を蹴らないようにとだけ注意して見ていました。多少迷惑に思った大人がいたかもしれませんが、こどもだから許されることがあると思います。それは大人の僕の判断です。今度一緒に行きましょう。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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