どうして大人は遊ばないの?

Q、どうして大人は遊ばないんですか?(小学6年生男子)

A

小学6年生の君は、どこで、誰と、何をしている時が「遊んでいる」ことなのでしょう? 1人でゲームするとか、友達とサイクリングに行くとかでしょうか? そもそも「遊ぶ」ってなんだ?

さて、『あな』という絵本があります。主人公は男子で名前は「ひろし」です。書き出しが「にちようびの あさ、なにもすることがなかったので、ひろしは あなを ほりはじめた。」とあり、スコップを持っている「ひろし」が描かれています。ページを開いていくと、黙々と穴を掘っている「ひろし」のところにお母さん、お父さん、妹、友達がやって来てあれこれ言いますが、適当に答えて掘り続けます。「ひろし」は今までやってみたいと思って、やってこなかった穴掘りをやり遂げます。誰かに頼まれて始めたのではありません。やりたいと思ったのはひろしです。深く掘ったところでイモムシに出会います。「ひろし」は「イモムシ」と心が通じます。そこで掘るのを止めて、穴に座り込んで壁に触り、匂いを嗅いで自分の穴を感じます。穴から上を見上げると青い空に蝶々が1匹飛んでいるのが見えました。「遊ぶ」というのはそういうことだと思います。

もう一度聞きますが、君は遊んでいますか? こどもが自分のやりたいことをやりたい時に、必要な道具を使ってやるというのは、なかなか出来ないことだと僕は思っています。親や、先生など大人の見守りが必要だからです。では大人はどうでしょう。大人は見守られなくていいのでこどもよりもっと遊べそうです。実際、大人は遊んでいます。自分がやりたいと思うことをしている時の大人はみんな遊んでいるのです。君が遊びだと思ったこともないことで大人は遊んでいます。僕が今、君の質問の答えを考えていることも遊びと言えます。遊びは真剣です。

君は庭しんぶんを読んでいるでしょう。写真も見てください。この新聞を作っている大人たちはみんな遊んでいると思いませんか。例えば庭ビルに来て庭師の康子さんと会ってみてください。大人もたくさん遊んでいるのだとわかります。遊んでいる人は自分ばかりでなく周りの人をも楽しませてくれます。君もいずれ大人になりますが、庭ビルの大人たちと付き合っていれば遊びを忘れることはないと思います。 でも君の観察した通り遊ぶことを忘れたように見える大人もいます。新しい出来事や面白そうなことに心が動かなくなってしまった人。自分以外の誰かが決めたことをするために1日の殆どの時間を使っている人です。大人の中には遊び以外のことで頭も心も一杯になっている人がいます。そういう人の近くにはあまり行かない方がいいと僕は思います。これが君への答えです。

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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