Q、春義さんが一番好きな絵本は何ですか? (庭しんぶん編集部)
A
嬉しい質問です。答えは、『ぶたぶたくんの おかいもの』(福音館書店)です。 どれくらい好きかっていうと、「ぶたぶたくん」と聞いただけで嬉しくなる。表紙を見ると「やっぱりこれが好き!」と思う。本文の奇妙な始まり方も傑作だと毎回思う。『絵本・子どもの本 総解説』赤木かん子著のおすすめ本400冊余りの中でも、『ぶたぶたくんの おかいもの』は見開き2ページで取り上げる特別扱い。それが僕の自慢という具合でとにかく惚れ込んでいます。
好きな理由は、自分の気持ちが主人公の『ぶたぶたくん』とぴったり重なるからです。「ひとりで おかいものにいける?」というお母さんの言葉に、ぶたぶたくんは、「いけるさ」と答え、初めてのお使いに緊張しながらも意気揚々と出かけるところ、パン屋のおじさんに「かんしん かんしん」と何度も褒めてもらって嬉しそうにしているところ、八百屋の前でかあこちゃんと会って楽しそうにおしゃべりしているところ、お菓子屋のゆっくりおばあさんに待ちきれない様子で「ぼく きゃらめる」と言っているところ、帰り道「ほんとうに このみちを いくと、ぼくのうちに いくのかしら」と心配になるところ、お母さんの姿を見つけて「おかあさん」と言ってかけ出したところ等々。
最後のページの地図と、ぶたぶたくんの黄色いリボン、かあこちゃんの赤いリボン、こぐまくんの青いリボンは、おかいものごっこをするこどもたちへの作者のプレゼントですね。作者の土方さんは1970年に70歳でこの本を作りました。僕も土方さんのような70歳になりたいと思います。