忙しい毎日の中でこどもと向き合うには?


Q

忙しさに追われて、5歳の息子と落ち着いて向き合う時間が取れません。心が通った時間を毎日の中で確保したいです。何か良い方法があるでしょうか?(30代男性)

 

A

「忙しいから仕方がない」とあきらめてしまったり、「自分は経済的に支えるのが役目だ」などと言い訳しないで、5歳の息子さんと心が通った時間を毎日確保したい、もう、その切実な気持ちだけで十分と思うほどですが、「心が通う」をキーワードにして考えてみました。まず、お父さんではなくこども自身の喜びと満足を優先することです。そして、相談者の忙しさを考えると短い時間でできることを考えましたが、たまには長い時間をかけて楽しんで欲しいです。

第1の提案。5歳の男の子ですから背が伸びたり、体重が増えていることを褒めてもらうと喜びを感じます。そこで「たかい たかい」を提案します。帰宅してすぐにでも「◯◯君、たかいたかいしようか」と誘います。それに応じて両腕を差し出してくれたら、両脇に手を差し入れ、しっかりと支え、「たかいたかいたかい」と言いながら、自分の目線よりも高く上げます。岩手県遠野市でわらべ唄の伝承者である阿部ヤエさんは、「たかい たかい」には4つの効果があると言います。①しっかり支えてもらう事で信頼感が育つこと、②いつもと違う目線で関わる楽しさを味わうこと、③高いところに慣れること、④成長を喜んでもらうこと。この中でもこどもの体をお父さんの腕でしっかりと支えることは信頼感が育つうえで特に大切です。ぽーんとこどもの体を放るようなことは絶対にしないこと。どんなに喜んでいるように見えても一瞬の不安と驚きを感じますから。また、こどもの体を降ろす時には「この間よりも大きくなったね。重たくなったね」と言ってあげると、自分の成長を確認し喜びます。ほんの30秒ほどのことですが、お父さんも信頼されることと、成長を確認している様子から大きな喜びを感じます。

第2の提案は朝の15分の散歩。朝がだめなら夕方でも。近くの公園まで、あるいはご近所を一回り。「少し早く起きて明日の朝から2人で散歩しよう」と誘います。予めこの時間までと決めておきます。目的地に行くためではなく、散歩そのものが目的です。こどものペースにとことん合わせます。支度を急かしたりしない。しゃがんでありを見つけたら隣にしゃがんで見ます。こどもが先に行ったら角で待っててねと約束しておきます。近所のお庭のお花を見たり、すれ違う人と挨拶したり、毎日同じコースを辿っても楽しいです。一回りして「ただいまー」と帰ってくるまで15分、物足りない感じがしますけど開放的で嬉しい時間です。「明日もまた行こうね」と約束します。

第3の提案は絵本を読むこと。5歳のこどもは10章ほどに分かれている単行本「エルマーのぼうけん」などを楽しめるようになります。1日に1章ずつお父さんが読むと決めます。朝でもいいし寝る前でもいい。あるいは曜日を決めてもいいでしょう。とにかくお父さんに読んでもらわなければ進まないわけです。読み始めるには覚悟が要りますが、読み終わった時はとても嬉しいです。お話が2人だけの共通体験になり、それが嬉しいのです。

以上3つの提案のいずれかでも相談者の現実に沿うものであることを願います。お父さんが忙しい今が、こどもが育つ一番大切な時間でもあります。この時を失うと取り返せません。5歳の息子さんが将来描く父親像はこの時につくられるのではないかと思うのです。応援します。

 


藤田春義
(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。