Q、4歳児と2歳児の母です。子だくさんの家庭に憧れていましたが、実際に母になると自分の器の小ささに自身を無くすこともあります。また、こどもたちを取り巻く環境、地球温暖化や、災害、保育士や教師の不足、低賃金や不景気などへの不安が消えません。こどもたちは「幸せだった」と一生を終えることが出来るのでしょうか?子を産み育てることに必要な「覚悟」とは何だと思いますか?
A
「覚悟」という言葉にあなた自身の「存在の重さ」を感じ、「ドキン!」と鼓動が一つ大きく打ちました。私の好きな『のえんどうと100にんのこどもたち』甲斐信枝作(福音館書店)には、さやの中のこどもたちがお母さんに外の世界を尋ねる場面があります。「母さん、お部屋の外には何があるの?」「山や川や畑が広がっているの。大きくなったらみんな見られますよ」。こどもたちは大きくなる日を待ちました。その言葉をこどもたちは希望にしました。しかし、質問者が今見ているのは先行きの不安、そして少々自信をなくしています。のえんどうのお母さんはその後、お日様の促しで、100人のこどもたちを茶色い服に着替えさせます。それは独り立ちのための支度です。それが今回の答えのヒントです。独り立ちに必要な支度とは何でしょう。それを私たちはどのようにして手渡すことができるのでしょう。
わが家では、「喜ぶものと一緒に喜び、泣くものと一緒に泣く」をモットーにしてこどもたちと生活してきました。一緒にごはんを食べ、絵本を読み、おやつを作り、カードゲームをし、散歩し、家族以外の人と出会うための旅行をしました。また、2人だけの時間を意識して持ちました。それは当たり前の生活です。私たちはその生活を楽しみました。こどもたちがその場とその関係を楽しむことは、自分がそこにいても良いと思える自信になります。この自信が、先行きの見えない明日を生きる力になります。児童精神科医の佐々木正美先生は「理由なき自信」と言っておられました。未来は「未だ来ていない」という意味です。そして、こどもたちに託されています。
のえんどうのお母さんは最後に、「後はお日様よろしく」とお日様にゆだね、丘の土に静かに横たわりました。私はこの場面がとりわけ好きです。自分の役割を為し終えた清々しさが伝わります。「喜ぶものと一緒に喜び、泣くものと一緒に泣く」そして「ゆだねる」。これが私ががあなたへ伝える「覚悟」です。もうひとつ、冒頭に感じたあなたの「存在の重さ」については、いつかお話したいと思います。