Q、春義さんにとって、わらべ唄ってなんですか? (庭しんぶん編集部)
A
わらべ唄は、「人として生きるために必要な知恵」だと思っています。40年ほど前、保育士として働き始めた頃にわらべ唄の研修に参加しました。その時に唄の意味について尋ねたところ、「今はもう言葉の意味は解らないから、解らなくてもいい」と答えられました。私は、意味の解らないことをやる意味はないと思い、わらべ唄を学ぶ気持ちを失ってしまいました。
ところが22年前のこと、露木大子さんという方を通じて岩手県遠野市の阿部ヤヱさんに出会い衝撃を受けました。ヤヱさんの伝えている「伝承のわらべ唄」は全て意味が解るのです。私はそれ以来何度も遠野に出かけ、阿部ヤヱさんから直接教えていただきました。伝承のわらべ唄は熊野の山伏によって、「人として生きるために必要な知恵」を伝えるために、赤ちゃんの時から大人がやってあげるものでした。
例えば、「赤ちゃんのおむつを替える時、黙ってさっさと始末するのではなく、語りかけ、うたいかけることで、赤ちゃんの気持ちを育て、体を育て、人間として大切な羞恥心を伝えることができます」と語ります。私が主催していた育児教室でも、保育士の方の研修会でもこのことを具体的な方法と共に伝えてきましたが、65歳になった今、さらにこの意味の深さに驚かれています。おむつをするのは人間だけです。いずれ下のお世話をされながら最期を迎えます。そう気付いた時、羞恥心を持つことがどんなに必要なことかを知りました。丁寧なおむつ替えをされて育った人は自分だけでなく相手の羞恥心をも深く理解できる人に育つと思います。私はそういう人に最期を看取って欲しいと切に願います。
また、赤ちゃんにするわらべ唄は、目を見ること、体に触れること、語りかけることの3つをいつも一緒にするようにと教えました。教えられた通りにすることで、人との関わり方を身に付けたのです。唄が教えている、言葉の意味と動作の意味が分かるとより深く学びたいと思います。昨年の2月にヤヱさんが亡くなりました。今私は、伝えられたものを大切に守り、伝えたいという思いを強くしています。関心をもたれた方は、『「わらべうた」で子育て 入門編』(福音館)、『「わらべうた」で子育て 応用編』(福音館)を読まれること薦めます。