春義さんにとって、おもちゃって何ですか?


Q、はるよしさんにとって、おもちゃってなんですか? (庭しんぶん編集部)

A

おもちゃは遊びのための道具、あるいは材料ですが、まず遊びとは何かを考えてみます。僕は30年以上前に保育士をしていたことがあります。その時はこどもの近くにいたのに「遊び」についてよく考えていませんでした。保育士を辞めて、こどものとも社に勤めて間もなく、こどもの生活と遊びをテーマにした樋口正春さんの保育者向け講演会に参加しました。お話しの中で日々こどもがしている活動について、なぜそれをしているのか?と問われました。その問いは自分の6年余りの仕事に対する深い反省を呼び覚ましました。体操も歌も砂場の活動も。なんのためと問わず、こどもの頭の中で描かれている事柄、手や足や身体が感じていることを深く考えず、漠然と見ていた自分を顧みました。自分のこどもへの理解の深さの分しか理解できないことが、今はわかります。こどもの考えていること、感じていることをどれだけ同じように考え、感じ取れるかが大切であることも。遊びについて言えば、砂場で山を作っているこどもたちは、考えていることを言葉にしながら、工夫し、失敗を重ねながら、砂山を高くし、トンネルを掘り、穴を掘って水を流し池を作る。目的を持って言葉を使い、身体を使い、互いの関わりを楽しんでいる。

さて、おもちゃについてはどうでしょう。シロフォン付玉の塔を例にして考えてみましょう。小さな球を穴に入れると、坂道を転がり、最後にシロフォンがチロリロリンと美しい音を鳴らします。おもちゃはデザイナーの持っているこども観、人間観、興味、関心などが形になっています。その意図を言葉では説明しません。こどもは目の前にあるモノと向き合い、面白そうだと思ったら体を動かしてそのモノと関わります。指で球をつまみ、穴に入れ、球を目で追い、音を聞く。おもちゃと関わりながら、言葉が生まれます。「ここに球を入れたら、こうなって、最後に美しい音がする」と。興味を抱いた他のこどもに遊び方を教えたり、一緒に面白そうな遊び方を考えたりもするでしょう。私たちは注意深く見て、こどもがしたいと思うことが実現できるように、様々な意味で環境を整えます。シロフォン付き玉の塔で2時間遊んだという話を聞いたことがあります。一つひとつの玉の転がり方の違いまで観察していたそうです。このようにこどもたちの遊び方がデザイナーの意図を超える場合があるかもしれません。こどもはおもちゃと出会った時、面白そうだと思って近づき、五感を駆使してそれを体験し楽しみます。僕は何百というおもちゃと出会い、デザインの素晴らしさに感嘆しました。そして優れたおもちゃは、面白いだけでなく、美しいと思います。

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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