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Q、最近4歳の息子がお母さんの方がいいと言うようになりました。どのように対応するのが正解ですか?(4歳男児の父)
A
「お母さんがいい」とはっきり意思を示すことは、自分自身を主張していること。「ぼくはここにいる」と言葉でも行為でも示していることで、その成長を喜びましょう。それと同じくらい素晴らしいのは、お父さんが息子さんの主張を聞き入れ受け止めていること。それはこどもの存在を認めることです。ところで息子さんは「お父さんじゃなくて……」と拒否しつつ、今しなければならないことは何かをわかっていますね。だから問題は関係性。お父さんではなくお母さんなのですね。それは何故でしょう。
もしかすると、4歳の男の子は様々なことに興味や関心を寄せて見ること、聞くこと、やることが一杯で落ち着かない日を過ごして、少し緊張感や不安感が持続し、疲れたのかもしれません。そんな時は安心感を求めます。それが「お母さんがいい」になるのかもしれません。排泄や着替えや食事などの、しなければならないことやすぐにしてほしいことがあっても、「そうだよね。こんな時は君の言う通りお母さんがいいよね。」と、息子さんの気持ちを言葉にしてみてください。「わかる、わかる、お母さんがいいんだね。」と繰り返して言葉にします。息子さんが「お父さんは、ぼくの気持ちをわかってる」と思ってくれればいいのです。少々時間はかかるかもしれませんがここが肝心です。「お父さんでもいいよ」となれば大成功! 困ったことはチャンスに変えましょう。「お父さんは話がわかる人、話ができる人」と息子さんに認めてもらえれば、それ以後の関係はより楽しくなることでしょう。
こどもは本当に真面目でいろいろなことを真剣に考えています。でも相手に気持ちが届くように話すのはとても難しいのです。そこをくみ取っていただければ、息子さんはあなたのことがもっと好きになります。ところで、お母さんにはかなわないと思っているお父さんはたくさんいるでしょう。はるよしさんもその一人です。だって、こどもにとってお母さんは「安心」そのものだから。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、不安なことばかりで、気が滅入ってしまいます。でも、こどもを不安にはさせたくはありません。こんな中でもこどもと今を楽しむ方法ありませんか?(30代男性)
A
新型コロナウイルス感染防止のため緊急事態宣言が出されました。同じ情報に接しても受け取り方は様々で、不安を感じる度合いはみな違います。不安感の強い人は居ても立ってもいられないくらい落ち着きを失い、日常のことも手につかなくなります。不安感の少ない人は、今何をしなければならないかをよく考えることができます。身近で信頼できる人から情報を得ることで、不安を少なくしましょう。必要な手立てを実行することも落ち着いた生活の役に立ちます。こどもは最も身近にいる大人の不安を映します。私たちがこどもの安心です。
さて、こんな中で安心はどのようにしたら築けるでしょう。第1はいつもの生活を丁寧にすることです。食べること、眠ること、お風呂に入ること、歯を磨くこと、着替ること等々。一つひとつを今までよりも少しだけ意識して丁寧にするのです。日常の事に心を向けることで安心がやってきます。あなたが心がけることで家庭の雰囲気は変わります。
料理もひと手間掛けましょう。こどもと一緒にできる料理を考えてください。おやつも手づくりしてみましょう。食べることは喜びに繋がります。お弁当をつくって、庭先でもベランダでもいいからお出かけ気分で食べましょう。撮りためたデータをプリントアウトしてこどもと一緒にアルバムづくりもおすすめです。編み物や工作もいいですね。これらのできごとを、離れて暮らす家族や、友だちと共有しましょう。
こうした話題をこどもと話します。その時はどうぞ聞き役に回ってください。こどもは自分が思っていることを話すことで安心を得ています。こどもが話し始めたら、「へえー、そう」とか「それ、面白いね」などと、うなずきながら聞きます。どんな話題でもいいから沢山話してくれたら大成功です。
横浜に住む三男から、家族が楽しんでいる様子がスマホで送られてきました。いつもは時間差で一緒に過ごす時間が少ないのですが、感染対策の外出制限が思いがけない家族の時間をつくりだしてくれたそうです。2人の孫の笑顔がはじけていました。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、「怒る」と「叱る」の違いってなんですか?(30代男性)
A
こどもとの関係のご質問としてお答えします。まず、「怒られる」「叱られる」側と「怒っている」「叱っている」側を分けて考えます。「怒られている人」は、「原因は自分がつくったのだからしょうがないけど、そこまで「カッカ」としなくてもいいじゃないか。まして「ゴツン」とやらなくたって!」と心の中で思っています。「怒っている人」は、「思わず怒鳴って、それに叩いてしまった。悪いことをしたのはあの子だけど、自分も感情的になってしまった。やり過ぎてしまったかもしれない。今度からは分かるように話をしよう」これは、「怒ってしまった」側の反省も含めた状態。
次に「叱られている人」は、「はいはい、分かりました。あなたの言う通りです。確かに私がやりました。悪いのは私です。「本当に分かっているかって?」はい、分かっています。でももう一度同じことが起こったら絶対にやらないなんて約束できない」と、心の中で思っています。「叱っている人」は、「悪いことは悪い、とちゃんと言って聞かせなきゃ、あの子のためにならない。少しくらい痛い目に合わせないと分からないし。将来のために必要なこと」これは、「叱った」側の理屈で相手を従わせる論理です。「怒る」のが感情的で、「叱る」のが論理的なんて区別してもなんの意味もなくて、どちらも力関係の差の大きい、抵抗できない相手に対するやや暴力的な接し方だと思います。
ぼくは長男、次男、三男、四男に対しては、「怒る」も「叱る」もしていました。よく考えていなかったからです。五男が生まれた頃から考えはじめました。児童精神科医の佐々木正美先生とお会いし、著書を読んだことがきっかけでした。「躾と称して理屈でねじ伏せ、暴力さえも正当化して叱ることが、大人の身勝手考え方だ」と気づきました。6番目に生まれた長女、7番目に生まれた六男に対しては「怒る」、「叱る」をほとんどしなくなりました。泣くにも笑うにも理由があり、機嫌が直ってから話せば、大抵のことは分かるのだと実感したからです。
質問者へ。「こどもに何かを伝えたい時は、気持ちに寄り添い気持ちを知るための努力をすることが、怒るよりも叱るよりも必要だ」と今の私は考えています。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、人間はどうして戦争するんですか?(小学3年生男子)
A
まず、国と国の戦争について考えてみます。国というのは、そこに住んでいる人たちが安心して暮らすことができるように互いに助け合う仕組みときまりをつくっています。それぞれの国は土地と持ち物と自分たちの命を守るための方法を決めています。その国によって守り方の方法は違います。日本は他の国ともめ事が起きて、土地や持ち物や自分たちの命が守れなくなるようなことが起きても戦争という方法はとらないと決めています。
こども同士で遊び道具の取り合いになったり、仲間同士で遊び場の取り合いが起きた時、上手く話し合いができればいいのですが、それが上手くいかないと言い争いになり、さらには力づくになってひどいケンカになる場合があります。相手が傷つくようなことを言ったり、身体を傷つけることをしてしまいます。武器になるようなものを持っていれば死ぬことがあるかもしれません。
国同士のもめ事で武器が使われたら、多くの人が死ぬことになります。国によって守り方は違いますと書きましたが、武器を持ちながら、相手の国が攻撃してきたら自分の国を守るために武器を使ってもいい、と決めている国もあります。また、たくさんの武器を持っていたら相手の国は攻撃してこないだろうと、強い武器を作っている国もあります。戦争を始めるとき、国は必ずその理由を考えます。相手が攻撃してくるからとか、自分の国を守るためには仕方がないとか。私たちの方が正しいとか。
ぼくは、人と人が言葉でも身体でも傷つけ合うのは本当にイヤです。ましてどんな相手でも殺すのは絶対イヤです。殺すというのは強い意志の力がないとできません。たとえ家族を守るためと言われてもイヤです。どうしようもない場合が起きたら、殺される方を選びます。殺されても殺す方にはなりたくないと決めています。
だから戦争をしないというきまりはとても大切です。そして、あきらめないで話し合いで解決することが大切です。人が言葉を持っているのは話をしてわかり合うためです。「こどものとも」をはじめに作った松居直さんは、「言葉が伝わらなくなった時戦争が起きる。だから、お隣の国の人たちを知ることが戦争を起こさないために必要だ」とおっしゃっていました。質問を寄せてくれたあなたにお願いがあります。どうか私たちの国や他の国がどのようにして自分たちを、そしてお互いを守るためにどんなきまりをつくっているかを調べてみてください。さらにあなたはどうするか考えてみてください。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、こどもはいつお父さんという存在を認識するの? お母さんは確実に認識している気がするけど、お父さんという存在は、いつ、どういうところから認知するものなのでしょう?(30代男性)
A
こどもが「自分の遺伝子の半分はお母さんから、あと半分はお父さんから受け継いでいる」と理解し、さらに「お母さんは自分を生んでくれた人で、お父さんは自分とお母さんと共に暮らし、守り育ててくれる人」と明確に理解できるのは8歳か9歳くらいではないかと思います。こどもはお母さんのおなかの中にいる時から、お母さんの匂いをかぎ、声を聴き、生まれた途端にその腕に抱かれ、おっぱいをくわえ、ほとんどすべての欲求を満たしてもらいます。だからこどもは命がけでその存在を頼りにします。お母さんをそういう存在として認識しているでしょう。
さてお父さんは何をする人でしょうか? お父さんがしていることが重要です。お風呂に入れてくれる。たかいたかいをしてくれる。「お父さんだよ」と言ってのぞきこんでくれる。それらの中でも赤ちゃんにとって最も重要なのは、おっぱいを飲ませてくれる人と微笑みをかわし、自慢そうに自分を見て、名前を呼んでくれることではないでしょうか。また、お母さんが安心して赤ちゃんのお世話をするためには、精神的に安定していることが不可欠です。それに一番貢献できるのがお父さんです。『驚くべき乳幼児の心の世界』(ミネルヴァ書房)では、生後3か月の赤ちゃんが、母親に向けていた注目を笑顔を残したまま父親にも向けることが記されています。どうぞ赤ちゃんを良く見てください。すでにあなたをかけがえのない人として見つめています。
とにかくお父さんのできることを毎日することで、こどもはお父さんは何をする人かを認識します。そうするうちに赤ちゃんはお母さんには安心を求め、お父さんにはワクワクを求めます。1歳の赤ちゃんは、間違いなくお父さんをそういう存在として認識しています。あなたにたかいたかいを求めて両腕を広げてくるとき、お父さんを求めています。でも、泣いている時に抱こうとすると手を払われてしまう。「今は、お母さんがいいの!」ということです。これが答えです。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、「どうして、私たちはこどもで、お母さんやお父さんは大人なんですか? 何がちがうの?」(5歳 / 女の子)
A
ひとつ目の答えです。大人は女の人も男の人も体の中に赤ちゃんが生まれるための仕組みができます。あなたのお母さんもこどもの時がありましたが大人になって、赤ちゃんが生まれる仕組みができて、お父さんと結婚してあなたが生まれました。あなたは、赤ちゃんだった時のことを覚えていますか? その時はお母さんのおっぱいを飲んで、ハイハイをしていましたね。そして、今は早く走ることも、いろんなものを食べることも、おしっこやうんちをすることも、服を着ることも、高いところに登ることもできるようになりました。でも、赤ちゃんが生まれるため仕組みは大人にならないとできません。だから、あなたはまだこどもでお母さんとお父さんは大人です。
ふたつ目の答えです。この質問を僕の9歳の友達にしたら、「こどもは小さくて、一人じゃ生活できない。大人は勉強して一人前になって、自分で考えて一人で行動できる。」と話していました。その友達は11月に横浜から遊びに来ましたが、飛行機に乗る時も、降りてからも大人の人に守られて千歳空港まで来ました。こどもは大人に守ってもらわなくてはなりません。あなたも同じです。だからあなたはまだこどもでお母さんとお父さんは大人です。
あなたは、お母さんやお父さんと自分は違うと気付きました。赤ちゃんではなく、大人でもない。5回目の誕生日をお祝いしてもらって、しかも女の子。違うところに気付くと同じところにも気づきます。アイスクリームが好きとか、タンポポのお花が好きとか、その一つひとつはあなたと他の人を結ぶ大切なものです。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、4歳児と2歳児の母です。子だくさんの家庭に憧れていましたが、実際に母になると自分の器の小ささに自身を無くすこともあります。また、こどもたちを取り巻く環境、地球温暖化や、災害、保育士や教師の不足、低賃金や不景気などへの不安が消えません。こどもたちは「幸せだった」と一生を終えることが出来るのでしょうか?子を産み育てることに必要な「覚悟」とは何だと思いますか?
A
「覚悟」という言葉にあなた自身の「存在の重さ」を感じ、「ドキン!」と鼓動が一つ大きく打ちました。私の好きな『のえんどうと100にんのこどもたち』甲斐信枝作(福音館書店)には、さやの中のこどもたちがお母さんに外の世界を尋ねる場面があります。「母さん、お部屋の外には何があるの?」「山や川や畑が広がっているの。大きくなったらみんな見られますよ」。こどもたちは大きくなる日を待ちました。その言葉をこどもたちは希望にしました。しかし、質問者が今見ているのは先行きの不安、そして少々自信をなくしています。のえんどうのお母さんはその後、お日様の促しで、100人のこどもたちを茶色い服に着替えさせます。それは独り立ちのための支度です。それが今回の答えのヒントです。独り立ちに必要な支度とは何でしょう。それを私たちはどのようにして手渡すことができるのでしょう。
わが家では、「喜ぶものと一緒に喜び、泣くものと一緒に泣く」をモットーにしてこどもたちと生活してきました。一緒にごはんを食べ、絵本を読み、おやつを作り、カードゲームをし、散歩し、家族以外の人と出会うための旅行をしました。また、2人だけの時間を意識して持ちました。それは当たり前の生活です。私たちはその生活を楽しみました。こどもたちがその場とその関係を楽しむことは、自分がそこにいても良いと思える自信になります。この自信が、先行きの見えない明日を生きる力になります。児童精神科医の佐々木正美先生は「理由なき自信」と言っておられました。未来は「未だ来ていない」という意味です。そして、こどもたちに託されています。
のえんどうのお母さんは最後に、「後はお日様よろしく」とお日様にゆだね、丘の土に静かに横たわりました。私はこの場面がとりわけ好きです。自分の役割を為し終えた清々しさが伝わります。「喜ぶものと一緒に喜び、泣くものと一緒に泣く」そして「ゆだねる」。これが私ががあなたへ伝える「覚悟」です。もうひとつ、冒頭に感じたあなたの「存在の重さ」については、いつかお話したいと思います。
藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。大阪社会事業短大専攻科卒。むかわ町にて保育のしごとを6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996 年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。年間 50 本以上の保育研修を実施。2000年より保育実践セミナーを主宰し、幼稚園や保育園の先生と絵本や伝承わらべ 唄、子どもの遊びについてセミナーを開催している。2019年度から研修部門をメインに活動する。北翔大学短期大学部非常勤講師。
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Q、はるよしさんにとって、おもちゃってなんですか? (庭しんぶん編集部)
A
おもちゃは遊びのための道具、あるいは材料ですが、まず遊びとは何かを考えてみます。僕は30年以上前に保育士をしていたことがあります。その時はこどもの近くにいたのに「遊び」についてよく考えていませんでした。保育士を辞めて、こどものとも社に勤めて間もなく、こどもの生活と遊びをテーマにした樋口正春さんの保育者向け講演会に参加しました。お話しの中で日々こどもがしている活動について、なぜそれをしているのか?と問われました。その問いは自分の6年余りの仕事に対する深い反省を呼び覚ましました。体操も歌も砂場の活動も。なんのためと問わず、こどもの頭の中で描かれている事柄、手や足や身体が感じていることを深く考えず、漠然と見ていた自分を顧みました。自分のこどもへの理解の深さの分しか理解できないことが、今はわかります。こどもの考えていること、感じていることをどれだけ同じように考え、感じ取れるかが大切であることも。遊びについて言えば、砂場で山を作っているこどもたちは、考えていることを言葉にしながら、工夫し、失敗を重ねながら、砂山を高くし、トンネルを掘り、穴を掘って水を流し池を作る。目的を持って言葉を使い、身体を使い、互いの関わりを楽しんでいる。
さて、おもちゃについてはどうでしょう。シロフォン付玉の塔を例にして考えてみましょう。小さな球を穴に入れると、坂道を転がり、最後にシロフォンがチロリロリンと美しい音を鳴らします。おもちゃはデザイナーの持っているこども観、人間観、興味、関心などが形になっています。その意図を言葉では説明しません。こどもは目の前にあるモノと向き合い、面白そうだと思ったら体を動かしてそのモノと関わります。指で球をつまみ、穴に入れ、球を目で追い、音を聞く。おもちゃと関わりながら、言葉が生まれます。「ここに球を入れたら、こうなって、最後に美しい音がする」と。興味を抱いた他のこどもに遊び方を教えたり、一緒に面白そうな遊び方を考えたりもするでしょう。私たちは注意深く見て、こどもがしたいと思うことが実現できるように、様々な意味で環境を整えます。シロフォン付き玉の塔で2時間遊んだという話を聞いたことがあります。一つひとつの玉の転がり方の違いまで観察していたそうです。このようにこどもたちの遊び方がデザイナーの意図を超える場合があるかもしれません。こどもはおもちゃと出会った時、面白そうだと思って近づき、五感を駆使してそれを体験し楽しみます。僕は何百というおもちゃと出会い、デザインの素晴らしさに感嘆しました。そして優れたおもちゃは、面白いだけでなく、美しいと思います。
藤田春義(ふじたはるよし)
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