朝、外の空気を吸うと春の匂いがしてきました。6歳の息子もこの春から小学生です。子どもの成長を追いかけるように6年が過ぎて行きました。
私は洋服と雑貨を扱う店を長く続けてきました。自営業で会社の代表。好きなことを仕事にしてきましたが、息子が生まれてからは仕事と子育てとの両立に悩み、迷い続けるお母さんでした。こどもが生まれると仕事に全力投球できなくて当たり前、今すんなりそう思えることも当時はなかなか受け入れられなかったのです。生まれる前は産後数ヵ月で仕事に復帰できるつもりでいました。同じ規模の会社を持つ夫とは育児は等しく分担し、日中は保育園に通わせ、頼れる義理の両親も近くにいる、きっと大丈夫、と。
ところが。そう簡単にはいかないものですね、子育てが始まってみると別世界。昼も夜もない育児と仕事との両立ができない、頭が仕事に切り替わらない。自分を責めてみたり、夫に不満をぶつけてみたり、子育てとはお母さんの役割なのだと思えば楽なんだと諦めのような気持ちになったり、悩む時期は続きました。そのうち気持ちが沈み生活にも支障が出るようになってしまい、仕事のやり方を変える決心をしたのが息子が1歳を過ぎたころ。店を続けたい気持ちになんとか折り合いをつけ、その後店を閉めました。時間が出来たことで、息子との楽しい時間は増えました。
ずっと自分本位な生き方で人に甘えない性格だった私が、自分より大切なものができて、迷ったり立ち止まったりすることを覚えました。あの頃両立しなくてはと思っていた自分に、今なら「ほどほどでいいんだから」「もっと周りに甘えようよ……」と言ってあげたい。きっとお母さんやお父さんになった誰もが、迷い、探りながら進んでいるはず。そんな周りの友人達にもっと相談したりすれば良かったな。
親じゃ親じゃと 親風吹かせ いばりなさるな
親は子どもの ヤレソレ 抜け殻じゃ
いつだったか東京の店のライブで聴いた青柳拓次さんが歌う「都節」。今ならすとんと腑に落ちる。迷う時にはそんな心持ちで、力を抜いていきたいものです。
佐々木智子(ささきともこ)
洋服と雑貨の店「cholon」店主。9月21日に庭ビルにお店をオープンしました。紅茶の本「Tea Time」の編集部スタッフ。趣味はアジアの旅と写真、市場めぐり。