月刊絵本2020年8月号

こどものとも 0.1.2. かもさんおやこの おさんぽ
増田純子 さく

「こどものとも0.1.2.」でおなじみの増田純子さんの新作です。いつも色がパキッとしていて、目がパッチリ。絵本の中の登場人物と目があってしまいます。今回はカモの親子のお話です。増田さんが近所のおばあちゃんと散歩していたときに見たカモの親子が絵本のアイディアになりました。お昼寝から起きたらお母さんも兄弟も誰もいない。不安になってお母さんを呼ぶとお母さんがちゃんと迎えにきてくれます。絵本を読みながら、取り残されてしまった子がもに気持ちをのせて一緒にドキドキして、そしてお母さんがくる場面では一緒に安心感を感じます。絵本を楽しんだら川にカモを見に行くと絵本の世界がさらに広がって楽しいですね。

こどものとも年少版 せっせ せっせ
花山かずみ さく

私はこどもが夢中になっている姿が好きです。静かになり、まばたきが減り、口をキューッと一文字にして黙々と取り組みます(親からみると夢中になっていることが必ずしも微笑ましいことばかりではありませんが……)。この絵本の女の子もせっせ せっせとお山をつくります。その夢中な様子が周りのこどもたちに伝染し、みんなで大きなお山をこしらえます。絵本の中のこどもたちがとてもいい顔をしていますし、お山をつくり終えた後の満足した顔がまたいいんです!

こどものとも年中向き さくぴーとたろぽうのおはなし おばけのおんがく
西平あかね さく

ようやく手元に届きました。待ちに待った『さくぴーとたろぽうのおはなし』の続編『おばけのおんがく』です。夜、布団に入ると部屋の中はシーンとしていて外の音が良く聞こえてきます。不意に不思議な音が聞こえてきたことないですか? 最初はなんともなかったのに、怖いことが自然と思い浮かんで、だんだん不安になったり怖くなった経験が私にはあります。実はその不思議な音の正体はおばけが奏でる音楽だったのです。不気味なものが迫ってきそうだけど、それがおばけの演奏だとしたら、「おばけはどんな音楽を演奏するの?」と一気に興味が湧いてきます。さくぴーとたろぽうとたくさんのおばけたちが音楽会に向けて練習しています。おばけの音楽は怖い音を出すことが大事。でもたまにかわいい音も聞こえてきます。表紙の裏には楽器の説明、裏表紙の裏には音楽会のプログラムがのっていて、細かいところにまで楽しませてくれます。今度から夜に不思議な音が聞こえてきたらこれはきっと「おどろおどろしいタイコ」かもしれませんよ。ワクワクしながらおばけたちの音楽に聞き入ってしまいそうです。

こどものとも ひ ふ み よ かぞえうた
土橋とし子 作

表紙だけで、この絵本はとてつもなく面白いということがわかってしまいます。作者は土橋とし子さん。『ありのあちち』『ひょうたんハウス』『アオッチとキーコ ひみつきちにいく』の作者です。『ひょうたんハウス』と『アオッチとキーコ ひみつきちにいく』は続編になっています。ペーパーバックでしか読めませんが、是非探して読んでみてください。 「ひふみよ」は古い日本の言葉=大和言葉の数え方「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ」の頭の文字をとったものです。ページをめくると、ひとつの〈ひ〉が最初につく言葉が並んで、言葉のリズムがとてもいいのです。語呂も面白いので音で覚えてしまいます。出てくる言葉と絵はつながっているので、読むたびに絵からたくさんの発見があり、それに気がつくととても嬉しく、繰り返し読むたびにわくわくします。十分楽しんだら自分でオリジナルの「ひふみよかぞえうた」をつくってもたのしいですね。 こどもと楽しむときは、先に言葉に出して練習してからをお勧めします。絵本屋でも初見ではつまずいていました。噛まないように十分練習することをおすすめします。

ちいさなかがくのとも せみのぬけがら
高柳芳恵 ぶん / 城芽ハヤト え

セミの抜け殻を見たことありますか? セミよりも簡単に見つけられます。木の枝や根元にあって、本物の虫のように見えますが、触ってみると空っぽ。種類によって姿形も違うし、じっくり眺めると半透明できれい。セミの抜け殻には不思議がいっぱいです。北海道でセミを見る機会は、春と夏の少しの期間。みなさんはセミの抜け殻を見たことありますか? 幼虫が脱皮した殻なのでもちろん中身はいませんが、他の虫の脱皮した殻は柔らかくて形が残らないのに比べ形がしっかりしているので一見本物の虫のようにも見えます。殻だけど怖いと感じる人もいる一方で、作者のようにセミの抜け殻の魅力に虜になってしまう人もいます。抜け殻には不思議がいっぱい。セミの種類によって形や色、大きさも様々です。絵本のなかでも色々な種類のセミの抜け殻が描かれているのでよ~く観察して見比べて見てくださいね。セミの抜け殻特有のぎざぎざがついた大きいあしは服や指にもくっつくので絵本に出てくる兄弟のように皆さんも楽しんでください。

かがくのとも カンガルーのふくろ
中島良二 さく

カンガルーのふくろは、温かくておっぱいがあって安心できる、あかちゃんのおうち。生まれてすぐ自力でふくろに入り、ふくろから顔を出すのは140日を過ぎるころ。でもまだ顔を出すだけで、外には出てこないんですって。お母さんが食べるときも、寝るときも、移動するときもずーっとお腹の中。そういえば我が家のこどもたちも、段ボールや押入れ、洋服ダンスに入ったりと狭い場所が好き。カンガルーとも共通する、動物的な本能なのかしら。

たくさんのふしぎ 空があるから
杉本憲彦 文 / 金子幸代 絵

外を眺めると空が広がっています。その空には雲があり、目には見えないけれど大気があります。大気がなければ人間は生きてはゆけません。「よし、息をはこう。むむ苦しくなってきたぞ、そろそろ吸おう」なーんて考えている人はいないと思います。それくらい当たり前にある大気について、わかりやすく書いてある一冊です。 大気ってなに? どうやってできたの? どんな役割があるの? そんな疑問に答えてくれます。読んでみると、地球は奇跡の連続で今に至っていることに心を動かされます。地球温暖化が問題視される今日この頃、一家に一冊是非どうぞ。さて最後に、私たちが透明な大気を感じる方法があります。本を読んで試してみてくださいね。

母の友 絵本作家のみなさんとー 今、家の中のたのしみを考える

今回の母の友も魅力的です。新型コロナウィルスによって自粛生活を余儀なくされました。そんななか絵本作家さんたちはどのように自粛生活を過ごしていたのか、そして家の中で楽しい時間を過ごすヒントが書かれています。それも書いているメンバーが豪華!小西英子さん、五味太郎さん、中川李枝子さん、スズキコージさん、林明子さんまだまだいます。こんなこと思いつかなかった!というような家の中での楽しみ方もあり、それぞれ個性もあって本当に面白くてにやにやしながら読んでしまいました。他にも「だるまちゃんとあそぼう!」というかつて母の友に掲載されたものが載っていたり、100%ORANGEさん特製の「買い物しようすごろく」も付録でついてきます。

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