定期便のはなし


半年間続けてきた定期便という新しい試みが無事に終わりました。お客さんは半年間何が送られてくるのかわからないのですが、実は送る側の私たちも何が送れるのかわかっていないという、一見謎が多い趣旨を持った試みでした。
この企画を始めようと思ったのは、ちょうど収穫期を迎えようとした頃でした。店舗を閉めた私たちは、収穫した野菜をすぐに食べていただける場所がなくなり、収穫作業から加工品の生産、さらに同時進行で販売のことまでできるのか、営業的なことが全く得意ではない私たちにそこまで手が回るのか?そんな考えが頭をよぎりました。作付け計画をしていても、その通りいくとは限りません。楽しみだけでなく、リスクさえも共有する関係があってもいいのでは、と思ったのです。有機や無農薬で生産している個人経営の農家、また、私のような加工品のつくり手が背負っている手間やリスクは、想像以上に大きく重いものです。定期便にしたら、生産者がより生産・製作に集中できるのかもと踏み出しました。
定期便を始めたことで気づくことがたくさんありました。定番と呼んでいる、毎年つくっているものを中心に発送しつつ、翌月何が送れるのか本当にわからないのです。手元にある野菜やくだものと相談して、セットの内容を決めていきました。発送日まで随分ドキドキしましたが、毎月宛名を見ると、皆さんの顔が浮かび、製作のモチベーションが下がることなく楽しい時間となりました。
行き場を心配しての生産・製作となっていたかもと思うと、新しい商品が生まれたり、同業者の方には「自分たちもやりたいシステム」とおっしゃっていただきました。とりあえずやってみよう!から始めた企画でしたが、予想以上に意味のある企画に成長していたと自分たちも驚いています。手づくり製品の生産量は限られているので、消費者と生産者が互いに信頼し身近になる、こういった形がちょうど良いのかもしれません。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。