スープのはなし


寒さが緩んでも、なかなか暖かいとまではいかないのがちょっとつらいこの時期。冬の間、スーパーへ行けば、色々な鍋のスープの素が売られていて、簡単に温かいものが食べられる本当に便利な時代です。でも、何かひっかかる。その心のひっかかりを絵本が解決してくれました。こどもと読んだ『くぎのスープ』という絵本。タイトルからして、むむむむ??? とくる絵本です。くぎ1本で極上のスープがつくれるという男ですが、実際には、コレを足すと旨くなる、アレを足すとさらに旨くなる、ますます旨くなる、ぐっと旨くなる、と言って、畑ではなく食材庫から色々な食材を足していきます。それが本当に絶妙な食材で、私までワクワクしてしまいました。なんだかんだ言いながらスープをつくっていく過程が実にリアル。巻き込まれながら、一緒にスープをつくっていく楽しさまでも味わえます(ちなみに、絵本の本当の内容は美味しいスープをつくるお話ではありません)。

きっとなんでもそうですが、ワクワクしたり、誰かと一緒に何かできるという「過程」は、とっても大切にしたいところ。スープの素で時間を短縮したり、次の行程を考えないというのは、やはりもったいないと思えてしまいます。だって、くぎ1本からも美味しいスープがつくれてしまうのだから。「安全に食べる」と同じくらい「つくる豊かさと想像する楽しさ」も忘れずにいたいと、3月は自分を確認するために一旦立ち止まるようにしています。そして新しい気持ちで、新しい1歩を歩み始めたいです。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。