ジャガイモのはなし

家族でジャガイモ掘りをしました。週に1度の家族の休みに畑作業、こどもたちはもちろんノリノリではありません。娘と父、息子と母のチームで、スコップで掘る係と、ジャガイモが見えたら手で芋を掘り出す係に分かれて収穫。たくさん収穫できた列、あまり収穫できなかった列、本当にさまざまです。何が理由なんだろねぇ。「宝さがし」と言いながら掘り進めました。畑で作業をしていると、色々考えたり、妙に納得したりします。

ジャガイモはこの時期に収穫したものを1年中食べます。トマトはひと手間かけないと1週間ももたないことを考えると、涼しい所にしまうだけで、1年中食べられるジャガイモを主食にしている国があるのもわかる気がするな。日本がお米を主食にしているのも、風土に適しているのはもちろん、保存しやすいのが理由かもしれません。パンの原料である小麦も同じかなと。自然の中で作業してると、納得すること、逆に謎めいたことが起こり、飽きることがありません。お昼ごはんはトウキビご飯を炊いて、鍋ごと畑に持って行きました。その場でおにぎりにして海苔を巻いただけ。おかずは無し。畑のトマトで水分補給。それでも外で食べるだけで特別な気持ちになるから不思議です。収穫したては新ジャガとして楽しみますが、寒くなって年を越えたら、甘みが増して美味しくなります。味が落ちるどころか、上がるように感じるジャガイモは、どこまでも頼りがいがあって魅力的です。

北海道はジャガイモ生産量全国1位。デンプンを取り出し、片栗粉として調味料にも変化します。芋餅は、ジャガイモに片栗粉を合わせるので芋に芋なんです。なんだか北海道らしい料理です。春になると芋自身が種芋となり、芽が出てきます。家族1年分の収穫に機械は不要、スコップと手袋でまかなえるとなると気軽です。

先日、北海道で大きな地震がありました。持つべきものを改めて考えました。防災袋(備蓄)の中に、1週間分の非常食は必要か? と。本当に必要なのは自然の水と、庭(畑)のある暮らしではないかと。非常食の多くは賞味期限があり、何も起こらなければわざわざ食べなければなりません。それはなんだか不自然に感じていました。仕事(畑)としてでなく、楽しみと生命力を培う場(庭)。そこにジャガイモがあれば、1年中食べられます。数時間の畑仕事が、地震の振り返り、そして仕事からの解放にもつながりました。帰り道にはスケボー、そのまま温泉へと向かい、気がつけばみんな納得の日曜日となりました。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。