基本のルール

かれこれ7年前、畑で野菜が安定して収穫できるようになり、たべるとくらしの研究所でごはんを提供するようになった時、いくつか自分的ルールを作りました。その中のひとつが、基本的にお肉をつかわないこと。自分たちでベーコンやソーセージなどを加工できるようになるまでは、素材としても肉は使わないと決めたのです。理由は色々あるのですが、簡潔に言えば、野菜が美味しいから。普段の生活ではお肉を食べているので、肉を使わないというルールはちょっとした冒険でした。

シンプルに野菜を焼く。それだけで野菜は充分に美味しいのです。でもそれだけでは、やはり成り立たないのでした。そこで、たべるとくらしの研究所のキッチンに常備している、どこの家庭にでもある調味料を組み合わせて色々な国の風味に変化させていく実験はとても不思議で、どんどん楽しくなっていきました。ブイヨンや中華スープの素なども使わないのですが、野菜の組み合わせと香りで、どんどん変化していきます。煮込みともなれば、野菜からの旨味にも敏感です。畑の野菜は、見た目は決して良いとは言えませんが、小さくても不恰好でも、味が濃い。北海道は寒い時期が長いので、煮込み料理は欠かせません。葉物が豊富なこれからの季節なら、すぐにできる和え物やマリネなどで、香りとともに楽しめますね。何気なく始めたお肉を使わないというルールですが、結果的に、淡白な味の重なり合いで料理することになり、味の仕組みが、見える(と感じる?)ようになりました。

北海道は、野菜だけでなくハーブを育てるにも適した環境で、あちこちにハーブ園があります。ハーブの良いところは、 ベランダや庭などの小さなスペースでも栽培できること。 そして、 効能が身体にダイレクトに響くこと。そうそう、呼び名も大切です。ハーブガーデンや、キッチンガーデン。そう呼ぶと、育てたりお世話をするテンションが上がります。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。