味噌のはなし


冬の間は、収穫期にコツコツ作り続けてきた保存食に頼りつつも、忘れてはいけない仕事があります。それは、味噌の仕込み。(まだ仕込んでない方! ギリギリ間に合います!)もう何年も味噌を仕込んでいますが、数年前から、材料のひとつである麹も仕込むようになりました。米麹は、蒸したお米に麹菌をふりかけ、そこから2、3日かけて菌を繁殖させることによって麹になります。いったい簡単なのか難しいのか……。ドキドキの数日間です。

麹菌をふりかけるとおよそ1日後に、お米に菌が付着し発芽します。そこまでは発芽を促すために電気毛布やコタツを使って人工的に保温と保湿をします。そして発芽して発酵が始まると、今度はお米自体が発熱しだすのです! するとぐんぐん温度が上昇します。温度が上昇し過ぎないよう放熱しつつ、また、菌はカビですから乾燥は禁物(カビはジメジメがお好き)、乾燥しないようにしっかり保湿し、発酵が持続する適温環境を探すのが私の仕事に変わります。

その変化にどう対応したら菌が喜ぶのか……しばらく苦戦しましたが、「麹菌の喜ぶ環境があるはず」と、あきらめず観察。天然酵母でパンを焼いたり、酵素シロップを仕込んでいるので、発酵は、菌がある一定の環境(温度や湿度)だと喜び・活発に活動すると知っていたので、とにかく観察しました。麹菌は、発芽する前の環境と発芽した後の環境では、求められることが違うので、そこに私が対応するという意識が大切なんだと。それを「手入れ」と呼びます。私たちは、つい自分主体で何かを作り出す感覚がありますが、実はそうではなく、観察し、変化に対応して、その環境を新たに整える「手入れ」は畑担当の理事長が畑作業で言っていたことと同じでもあったのです! いや、実はこれって、料理や暮らし、子育て等々と一緒では? と。2、3日の慌ただしい麹菌の変化が、緩やかな日々の変化の大切さまで発展し、変化を見逃さないで柔軟に対応しようと、今、私は目をギラギラさせて、春の訪れを待ちわびて、台所に立っている毎日です。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。