虫のはなし


山の中で自然に近い暮らしをしているので、虫はかなり身近な存在です。もちろん、ギャーと叫んでしまったり、ゾワゾワした経験は何度もあります。でも、1年中同じ虫に追われることはないので、そのサイクルが分かってくると、退治するより過ぎ去るの待ったり、被害にあわないような対処を考えるようになりました。そして、見えない所で助けてくれる存在であることも分かりました。まるで同居人(虫)のような、ご近所付き合いのような感覚です。

以前、福島のあんざい果樹園で林檎を自然栽培に切り替えようとした時に、木についた虫の量といったら、木一面に毛虫がビッチリ。林檎の葉を全て食べ尽くしてしまい、裸になった木の光景はなんとも不気味で、自然の脅威みたいなものを感じました。もちろん収穫は見込めなくなり、木の生命まで心配になり、無農薬栽培に切り替える厳しさを目の当たりにしました。その後、防虫剤の散布をすることなく、林檎と呼ぶには程遠い木の実が収穫できるようになりました。そして、やっとこれからと思った頃に震災が起きてしまったので、私たちの林檎の自然栽培計画は道半ばという想いですが、気持ちは続いて今がある状態です。

同じ頃、東京に梨を販売に行った際、試食で剥いた後の皮に、いつも寄ってくるはずの虫が、まったく来なかったのです。それはそれで衝撃的でした。場所が変わると虫の事情も変わるんですね。食べものと虫の距離や感覚がちょっと違ったように感じました。暖かくなってくると虫も活発に動き出します。さてさて、これからどんな虫とご対面するのでしょうか。ワクワクではなくドキドキ。経験上、1年目は驚きしかないでしょう。覚悟を決めて過ごしています。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。