パンのはなし

旧暦では立夏も過ぎて、夏至を迎える夏の季節。陽の光や気温が、生き物たちを活動的にさせます。もちろん、私たち人間も眩しい光にやる気が出ますね。畑に行けば新しい芽に生命力を感じます。しかし、保存しているジャガイモなどにも芽が出始めて、実は慌てる時期でもあります。まだこんなにたくさんあったのね……と。これも毎年の繰り返し。

北海道の6月は、パンを焼くのにとっても良い季節です。時間があるとついついパンを焼いています。基本はカンパーニュ。粉と塩と水と酵母。そんなシンプルな材料でパンが焼けるなんて、本当にありがたいと思っています。葉ものも出始めているので、サラダと合わせて、温かい季節のランチです。 こどものおやつにと、油と豆乳と甘みを足せばふわふわのパンになるから不思議。いったい生地にどんな化学反応が起こっているのか。毎回不思議に思うのだけれど、結局「わたしの経験値」と片付けています。配合や水分量、発酵時間などが自分なりに決まっていくと、自分だけの秘密のレシピのようでちょっと誇らしい気持ち。

発酵は菌の活動。寒すぎると働かないし、暑すぎると活発すぎて過発酵となるので気も遣うし慌ただしい。菌の力を借りる天然酵母で、発酵器を使わずに自然発酵でパンを焼くなら、暑くなる前の今がオススメ。失敗しても涼しい秋が来ます……。冬前にはコツがつかめると、冬のスープとともに自家製酵母パンが楽しめますよ。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。