豆のはなし

北海道に住み始めてから目覚めた食材は色々ありますが、豆がこんなにも豊かだとは知りませんでした。海の近くで育った私は、身近になかったせいか豆については詳しくなく、枝豆がその後大豆になるなんて思ってもみませんでした。自然栽培で野菜を育てはじめた頃、私の中でハッキリと美味しさの違いを感じたもののひとつが枝豆でした。豆自体は可哀想なくらい小さかったものの、味の濃さが明らかに違いました。そして大豆の美味しさも。それからというもの枝豆(大豆)は、必ず育てたい野菜のひとつとなっています。

豆……とひと言で言っても色々あり、実に奥深く、魅力的です。給食で出た五目煮は豆が柔らかくて、豆の味がせず、実はあまり好きではありませんでした。おそらくグリンピースも同じような理由で嫌いだった方が多いのではないでしょうか。しかし自分で下茹ですれば、豆の茹で具合や固さを自由に変えられます。少し固めに、わが家ではポリポリ茹でとして楽しむ機会が多いですが、しっかり茹でて潰すと滑らかなペーストになるなど、茹で方ひとつで全く質感が異なり、料理によって変えています。品種によってこれは柔らかくなくては駄目らしいという豆があるということも北海道に来て知りました。

甘いものにもしょっぱいものにも対応できて、栄養価が高く、保存もきく。世界各国にその地域ならではの豆がある。広大な土地と寒い北国である北海道には、なくてはならない食材なのかもしれないと想像しています。秋頃の豆が、浸水することなくすぐに柔らかくなるのは、育てた者のご褒美なのかもしれません。あの面倒であり大変な、さやから出す作業さえなければ……とは思うのですが。豆も種ですから、必死に生き抜こうとしてるのでしょうかね。これから始まる豆の季節、そんなこんなを思いながら、豆をもっともっと知りたい! もっと使いこなしたい! と思っている、まだまだな発展途上な私のお話でした。そして私の豆への探究心は尽きないのでした。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。