砂糖のはなし

とにかく気持ちいい季節です。山の中で暮らしていますが、淡い色をした木々の山道はまるで日本画の中、と思っていたら一瞬で終わってしまい、今は濃い緑へ変わりゆく生命の力強さに圧倒されています。北海道に移住して7年、冬さえうまく越せれば、これほど暮らしやすい町はないかも……と思っています。「夏は北海道から出ません」と宣言しているほど。北海道の夏の暮らし…… 人間にとってはサラッと過ごしやすいですが、虫は蒸し蒸しがお好き。このサラっとが原因で繁殖にずいぶん苦戦しているようです。つまり野菜や果物を育てるのに、農薬の使用量が少なくて済むわけです。自然に近い状態で育った作物が採れるワクワクの収穫時期。そして収穫とセットになるのは調理と保存。

庭しんぶん7号で、塩のお話をしました。塩が「なくてはならない調味料」なら、砂糖は「ワクワクの調味料」だと思っています。これには、????と思う方も多いかもしれません。最近の家庭では白い砂糖がない、砂糖自体ない、なんていう話をよく耳にします。虫歯になるとか、太るとか、身体を冷やすとか、ちょいワルのイメージが強い砂糖が、ワクワクの調味料だなんて。私は、大量のくだものをジャムにしたり、砂糖漬けにして発酵させた酵素シロップを作っているので、みなさんよりもたくさんのを砂糖を使っているかもしれません。ジャムの甘さは、家庭でつくれば自由ですし、脱気を覚えれば無添加で仕上げることもできます。低糖の場合は、早めに食べきれるようビンは小さめに。マーマレードは、生では食べれない苦い皮を下処理して、砂糖と煮ることにより、美味しく皮が食べれるようになる。丁寧に育てられたくだものが、まるごといただけるうえに、美味しくて美しいのですから。夢のようです。酵素シロップは砂糖を多く使用しますが、非加熱のまま保存できます。100%のストレートジュースでさえ、市販されているもので非加熱はほとんどあり得ません。

お肉を柔らかくする効果や、酢や味噌に合わせてまろやかにしたり、お菓子では焼き色やしっとり効果も。どうですか? ワクワクしませんか? 笑。砂糖は上手に付き合うと、暮らしがとっても華やかに、食卓が鮮やかに、時には癒しになると思っています。これからくだものの季節がやってきます。イメージを膨らませて、自分好みの仕上がりにして、長く楽しむ。保存やプラスαとしての砂糖の使い方にも、夏を前に、ぜひ注目していただければと思います。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。