僕はこの本を読み始めた瞬間から、1週間くらいずっとこの本の中から抜け出すことができなくなりました。四六時中、心はファンタージェンの世界で過ごしていました。夢中に読んでいるうちに、息を吸うのも忘れて酸欠状態。くらっと倒れかかって我に帰るとバスチアンと一緒にファンタージェンにいました。この本は、作者のエンデも言っていますが、「魔法の本」です。本当に本に吸い込まれてしまいます。とても危険な本です。生涯、忘れることができない世界に出会うでしょう。そして、僕はすべてのこどもたちにこの本に出会ってほしいと思ってます。その訳は、本の中に！ ミヒャエル・エンデ

SFの女王、そしてゲド戦記の著者ル＝グウィン。彼女のルーツを知ることができる一冊。ゲド戦記は有名だけど、『闇の左手』は知らない人が多いかもしれない。どっちも好きだけど、ル・グウィンは『闇の左手』のほうが生き生きしている。この本の作者はル＝グウィンの父親です。僕たちがこの物語を読めるのは、イシという人物が、二つの世界の両方を同時に生きてくれたから。つまり、インディアンと白人の〈あいだ〉を白人の言葉で書き残してくれたからです。イシの目を通してインディアンの世界を、そして、イシの目を通して白人の世界を。さらに、自分が自分の目を通して世界をどう見ているのかを教えてくれる。君は、世界をどう見ている？ 。 シオドーラ・クローバー 作 / 中野好夫・中村妙子 訳

大きな都会のはずれ、市街地のはずれにある小さな円形劇場。そこは誰からも忘れ去られた場所でした。そこに住んでいる、背が低くて、やせっぽちで、ボロをまとったもじゃもじゃ頭の女の子がモモです。お父さんもお母さんもいない、ひとりぼっちの女の子です。そんなモモが灰色連中から僕たちのために時間の花を取り戻してくれたのでした。 ミヒャエル・エンデ 作 / 大島かおり 訳

主人公の少年チトには才能がふたつあります。ひとつは「問いかける力」。そしてもうひとつは、チトの親友の庭師ムスターシュしか知らない、「植物を芽吹かせる素質＝みどりのゆび」。ムスターシュは、チトが問いに立ち向かう力を与えてくれる大切な友達でした。友情とは、年齢や性別や国籍に関係のない結びつきのこと。チトの最後の問いは「死」についてでした。でも、その問いに寄り添ってくれるムスターシュは、もういなかったのです。チトは明確な答えを出さないままでこの物語は終わります。ぼくは、この物語には続きがあるような気がしています。この物語はたくさんの人と分かち合いたい、語らいたい一冊です。 モーリス・ドリュオン 作 / 安東次男 訳

名前は知ってるけど読んだことがない、そこのあなた！ どんな書店や図書館にもこの本は必ずありますから、まずは手に取って眺めてみてくださいな。星の王子さまって何者だったんでしょうね。あ、もう一回読んでみようっと。 サン＝テクジュペリ 作 / 内藤濯 訳

着のみ着のままで、何も持たずさすらい歩く。そんなこと、したくないですよね。したくもないって？まあ、特別な事情がない限りはそうでしょう。主人公のラスムスは、孤児院に嫌気が差して抜け出して、ゆくあてもないまま何も持たずに歩いていたのです。そして、放浪者オスカルに出会います。ラスムスはお父さんとお母さんを、そして自分の居場所を探していたのです。ラスムスには、何も持たずに出てきてしまうほど、手に入れたいものがあったのです。 アストリッド・リンドグレーン 作 / 尾崎義 訳

どことなく不思議な物語。その不思議さを読みながら考えました。プロイスラーといえば、『大どろぼうホッツェンプロッツ』。比較すると本作はずいぶん感じが違う。「あれ？ ここどうなってるんだ？」という物語の因果関係の曖昧さ、説明されていない余白がたくさんある（ドイツの文化や風習を知らないからかもしれませんが……）。だけど、ぐんぐん読み進めてしまうんですよね。そこが不思議の原因。でも、細かい辻褄なんてのは、頭の中で理屈っぽく理解してるだけで、僕たちの日常にはもっと曖昧模糊としたリアリティがある。そういう生々しさが描かれているから、引き込まれちゃうということなのかもしれません。そういえば、昔話とか伝承も同じような不思議さがあるなぁ。 プロイスラー 作 / 中村浩三 訳

ぬかりなく用意周到な大どろぼう。読んでいると本当に怖くなってくるんですけど、息子と一緒にドキドキしながら読みました。続編もおすすめです。 プロイスラー 作 / 中村浩三 訳