独特なケストナーの語り口に慣れてしまえばあっという間です。布石を見せてしまう感じが好きです。詩人でもある彼曰く「人生は、なにを悲しむかではなく、どれくらい深く悲しむかが重要なのだ。」ですって。「あったりまえ！」。 エーリヒ・ケストナー 作 / 池田香代子 訳

かつて難しいなと思いながらもがむしゃらに読んだ指輪物語。何度か読み返しながら、この物語の魅力を少しずつ理解していきました。今度読むときは、トールキンがこどもをどう見ようとしていたのか、そこら辺をもう少し知りたいなぁ。 J.R.R.トールキン 作 / 瀬田貞二 訳

岩波少年文庫が70周年を迎えました。このシリーズの礎をつくりだしていただいた石井桃子さま。あなたが、妥協なくこどもと児童文学に向き合い格闘してくださったからこそ、今僕はたくさんの物語に出会うことができます。僕は本好きですが、児童文学には本のすばらしさのすべてが詰まっているのではないかと思います。あなたが、選ぶ時の基準にしたのは、本を読んだ時に桃子さん自身が感じる「喜びの訪れ」だと70周年の特設サイトで知りました。本を読んで感じる「喜びの訪れ」。その基準、最高すぎです！ あなたが20代で訳し始めた『クマのプーさん』で、コブタが「プー、きみ、朝おきたときね、まず第一にどんなこと考える？」と問いかける場面が思い浮かびました。そして、「幸せを感じること」、それが何よりこどもに必要なことなのかもしれないなと……。今収録作品は460冊を超えたんですって。まだまだ読む本がたっぷりあって、幸せだなと思います。 A.A.ミルン 作 / E.H.シェパード 画 / 石井桃子 訳

「ゆこう どこかにあるはずだ もっとよいくに よいくらし！」とタイコをたたきながら言う人がいた。その先がどうなるかって？ ぜひこの本を手に入れて読んでください。ぼくは、「どこか」じゃなくて、「いまここ」ってのがとても大切なのだ、ということにある時気がつきました。 ライナー・チムニク 文・画 / 矢川澄子 訳

小さい頃は、校区内はほとんどかけ回って知っていたし、昼間からぷらぷらしている不思議な大人も少なからずいました。 たぶん、ゾマーさんは本当にいた人なんだろうなぁ（作者が育った戦後まもないドイツの郊外の街だったらなおのこと）。こどもの頃は、世の中の普通ってことを知らなかったから、あんまり不思議に感じなかったけど、大人になってから思い出すと、あの人は何をやっていた人だったのかなぁ～って考え込んじゃう。 でも、たぶんゾマーさんみたいに「ほっといてもらいましょう！」って言われそう。人の言うことを気にしすぎると疲れちゃうからね。自分が感じたり考えたことに素直に生きることもけっこう大変なんだよなぁ。 パトリック・ジュースキント / ジャン＝ジャック・サンペ 絵 / 池内紀 訳

さまよう影を引き受けるオフェリアさん。ヒトリウス、ヤムヨール、ムナシーゼと少しずつ仲間が増えて影の一座をつくり、世界中を旅します。ある吹雪の夜、彼らはひとりの影に出会います。その影を引き受けると闇に包まれます。ただ、つぎの瞬間にわかに視界が開けて、さまよっていた影はみな新しい姿にかわりました。そして、彼らはオフェリアと光の一座となりました。さて、最後にオフェリアさんが引き受けた影の名前を当ててみてください。 ミヒャエル・エンデ 文 / フリードリヒ・ヘッヘルマン 絵 / 矢川澄子訳

やかまし村シリーズ、イングリッド・ヴァン・ニイマンの挿絵と新訳による1作目。やかまし村での出来事を中屋敷に住むリーサが伝えてくれる。中屋敷にはラッセ、ボッセ、リーサ。南屋敷にはウッレ。北屋敷にはブリッタとアンナが住んでいる。3軒の家しかない小さなこどもたちのお話。 アストリッド・リンドグレーン 作 / イングリッド・ヴァン・ニイマン 絵 / 石井登志子 訳

繰り返し読んでも、すっきりわからない、そんな味わいがあるいい本です。この本でメアリーが太陽と踊る場面があるのですが、終わりの時間がきて、太陽がメアリーたちに別れを告げるとき「 ——— ほんのしばらくのあいだ ——— ごきげんよう！ ごきげんよう！」というセリフがあるんです。この最後の「ごきげんよう！」という別れ文句が僕はとても好きです。祈りが込められている気がするんですよね。 メアリーは僕のあこがれの人でもあるんです。絶妙なメリハリがたまりません。こどもが好きになっちゃう魅力がたっぷりあるんですもの。それでは、ごきげんよう！ ごきげんよう！ P.L .トラヴァース作 / 林容吉 訳