イギリス・仕事場としての庭 1

ちょいとイギリスに行ってみました。 ヒースロー空港で車を借り、一足先に出かけていた「農的くらしのレッスン研究科」のBlue Lily君と合流、主に西方・ウェールズを10日ばかり走りまわりました。数年前からこの地で農的暮らしを試みている旧知のSさんのお世話で、何ヵ所か興味深いところを見聞することができました。

関心ごととしては、いわゆるNPO的な活動、とりわけ「半農半エックス」型ライフスタイルを共同で組み立てる根拠としてどんな工夫があるのか、やれてるところではみんな(主宰者側)がどういった顔つきをしているのか、どのようなリアルが生まれているのかなどというあたりでした。で、どうだったの? ということですが、それぞれにゲンキそうにやっていた。たぶんうまくいかなくてチンボツした試みも多々ある土壌に生えているたくましい奴らという印象をおおむね持った。

自主的に何かをやるという点では、日本とは歴史も環境も違うわけですけれど、ひと昔前なら汚らしいヒッピー、今そう呼ばずともややアヤシイ人種がやってるというふうにフツーの人からは見られる企画でしょう。立地やファンドなどで相当の苦労があることが想像できます。でも相当にしつこくやる、やり続けるし、世に主張していく。そういった実績が認知され社会からも無視できない存在として育ってきていることが、なんとなくですけれど今回わかって良かった。

私たちもがんばらなくっちゃということですが、頑張り(精神)で道が切り開けるのであれば世の中こうなっていない。やはりこのウェールズの彼らや広く先人たちから学ぶことがあるとしたらアイデアや技術といったものなんでしょう。 そういうものにふれるとしたら旅ばかりではないと思いますが、もう一歩も二歩も日常から踏み出していく契機を意識的に作っていきたいものです。

 

CAT (Centre for Alternative Technology)

CATのリーダー格であるピーター・ハーパーには残念ながら会えませんでしたけれど、人づてに「人類が生存していくのに自然環境の復元能力をあてにできるのはこの先50年と考えていたが、近年それが早まっている。廃棄物浄化とかエネルギー削減とかということを個別に試みるだけではもう間に合わない。残るはそういうことに対応可能な能力を持つ人材を急いで育てること」と聞きました。実際彼らはCATの敷地の奥に、WISE(The Wales Institute for Sustainable Education)という学校を建築中で、それは既存の大学との提携で大学院の機能を持つというものでした。

人類がいなくなっても自然はそれなりに回復していくだろうと言う人もいます。でもそれってナンチャッテ話なのであって、自分としてはそういう一種の諦観ということからは距離を置きたいと思うわけです。 日本に戻ってみて、のんびりしている、なんか自然が豊かなんだなと感じます。でもよく見てください、それってムカシの人が考えた水平線の果ての大きな滝のようなものへの直前状態なわけです。その崖っぷちにいることをごまかしてこの人たちはどこへ行くのかな。私は高所恐怖症なので崖の上なんぞまっぴらごめんであります。

ながたまさゆき