庭しんぶん2018年9月号(#013)の特集は「時間」です。
タイのバンコクに向かう飛行機の中で書いています。出発が15分ほど遅れ、遅れを取り戻すべく操縦士が雲の上をぶっ飛ばしているところ。
こどもの頃、時間っていうのは、乱れることのない安定したもの、確かなものって考えていました。秒が積み重なって分になり、時になり日になり、月になって年になる。飛行機の出発が遅れるのはよくあることですが、時間がゆっくり進んだり、早くなったりってあまり考えませんよね。でも、そう感じることはたくさんあるな。ただ、そう感じても時間は一定のスピードで動いているはずだと信じています。学校に遅刻した朝、先生に「いつも通りに家を出たのですが……どうも今日は時間の奴がちょっと早く進んでいるようで……」なんて言い訳したところで、取り合ってもらえそうにありません。時間は、僕たちの力が及ばないところで、非常に安定して進んでいるように感じます。
最近話題のサマータイム。僕はロンドンに住んでいた頃に体験しました。緯度が高い地域で、夏と冬で日照時間が大きく変わるので、夏の陽の当たる時間を有効活用したり、電力消費を抑える目的で導入されている制度です。体調不良を引き起こすという意見もあるようですね。ヨーロッパの場合、3月の第1日曜日に時計を1時間進め、10月の最終日曜日に時計を元に戻します。ぼんやりしてサマータイムの初日を忘れていると、待ち合わせの時間に1時間遅れ…… 着いた頃には誰もいない…… なんてことに。乱れることなく進むと信じていた時間が、人の都合であっさり進められたり、戻されたりするのはちょっと不思議な体験です。
あっ、そろそろ着陸の時間が近づいてきました。タイと日本の時差は2時間。時計の針を2時間戻してバンコクに降り立ちます。海外旅行に出かけたときも時間が進んだり戻ったりしますね。ヨーロッパやアメリカに旅すると、半日くらい時計を戻したり、進めたり。そうなってくると、もう、時間って…… 初めての夏休み、息子の旅のおともは「モモ」。時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語。