しんしんと雪が降り積もる夜中に散歩にでると、足元の雪を踏みしめる「ギキュッ」という音が体に響く。雪に吸い込まれた音がはっきりと聞こえる。「しずかだなぁ」と思い、足を止めて空を見上げると「パツパツパツ」とアウターに雪が当たる音が響く。キーンと冷えて静かな夜にいっそう耳を澄ましてみると、全身が音に取り囲まれる。雪国育ちだからわかるこの感覚。つまり、体のどこかに音の記憶があるから想像できる世界がある。『よあけ』は「おともなく」から始まるのだが、その言葉のせいでのっけから音を意識してしまう。きっと、体のどこかに音の記憶があるのだろう。その音を体で感じてみたいなぁと思う。絵本で出会う初めての音の世界ってあるわけです。いまだ聞いたことのない音、出会ったことのない音や風景。この本は、まさに絵本を片手にその音を探しにいきたくなる一冊。さて、どの湖にしようかしらん。
ユリー・シュルヴィッツ 作・画 / 瀬田貞二 訳
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