お塩のはなし

たべるとくらしの研究所は「種まきから食卓まで」のあれこれを研究しています。 外(畑)部門と中(調理)部門に分かれていて、 外部門は種まきから収穫まで。 農薬や肥料も与えない自然栽培と呼ばれる方法で育てています。 それは、いわゆる単一栽培の農家のイメージよりも、「庭」で色々な作物を育てていく……。という、家庭の菜園の延長をイメージした方が近いかもしれません。 北海道では、雪で土作業ができない時期が長く、その分広大な土地で量をつくる。という方法が主流ですが、小さく土地を持ち、冬は土地も休ませて、色々な種類をつくり、収穫量全て保存しながら使い続ける。という、ミニマムの循環も目指しています。そこで、中(調理部門)が重要でもあり、 どう長持ちさせて、使い続けるかを、いつも考えています。 カタチがいいものばかりではなく、とても処理に時間がかかりますが、不思議と「価値と愛着」がもてます。本土は春の便りが届く頃ですが、 北海道の最後の露地物の収穫は11月。かれこれ4ヶ月が経とうとしています。保存の仕方も、雪の下から、冷凍や瓶づめ、オイルや醤油漬けと様々ですが、やはり欠かせないのは「塩漬け」かと思っています。どこかの絵本で王様が娘に「何が大事か」という問い、それに「塩」と答えたおはなしがあったような記憶がありますが、 こどもの頃は、ふぅ〜〜ん。くらいでしたが、今は「まさに!」と、思っています。甘いのからしょっぱいものまで、味の決め手は、ほぼ塩で調整してるのでは? 大袈裟ではないと思っています。北海道では、気温が低く、発酵もゆっくりなので、なお、塩漬けが適してるのではないでしょうか。漬け物として食したり、保存の楽しみだけでなく、 発酵が進んだ漬け物は、複雑な味となり、調味料として、味の土台を作ってくれることもあります。ご家庭でも必ずあると思われる「塩」。どういったものを、どんな風に……。身近な台所から考えてみると楽しくて、奥深さに気づくのではないでしょうか。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。