カレーのはなし

今月の特集はカレーですね。給食の人気メニューには必ずカレーが挙がってきます。イベントに出店すると、暑い夏も、寒い冬も、カレーはお天気に左右されず不動の人気。さてさて、みなさんはお家カレーをどう作ってますか? 昭和育ちの私のこどもの頃は、お家カレーといえば、母が作るルーを使ったドロっとしたタイプでしたが、大人になり、インドカレーと出会い、北海道でスープカレーを知りました。では、今のわが家のカレーは…… 実はコレっ! という形はなく、スパイスで仕上げる時もあれば、カレー粉やルーを使う時もあります。ただ、スープはたっぷりサラサラタイプが好きです。息子にはドロっとしたカレーも食べたいと言われていますが、どうにもこうにも…… そこはつくる気になれません。あの強すぎる味が、具など素材の味がしなくなり、平面的な味になるうえ、いつまでも身体や記憶に残るからです。

私は、家庭料理の自由さが好きです。昭和も戦後あたりのガチな職人、厳しい修行を経験してきた料理人の父が昔言っていました、女の人は家庭料理に向いていて、男の人に職人が多い、と。それは「体温の変化」が理由だと。女の人は、体温の変化に影響されて味も変化してしまうというのです。それは職人としてはマイナスになりがちだけど、家庭のごはんとしては、変化があって飽きないんだよ、と。私がお母さんとしてつくるカレーは、素材の味でスープを作るように、塩で味を整えて、ハーブやスパイスで料理が華やかになるイメージ。家族の体調や気候に合わせつつ、気負わず、冷蔵庫掃除的にカレーにしちゃえ! そんなノリで作るカレーもお家カレーの良さだと思っています。しかしながら、よそのお宅でいただくカレーや、昭和な味がするルーカレーも懐かしかったり。結局どれも美味しいわけで、やっぱり凄いなカレーライス、ですね。

 


安斎明子
(あんざいあきこ)
たべるとくらしの研究所副理事長。畑担当の理事長が作った野菜たちにたっぷり手間暇をかけ、一切の無駄を出さずに絶妙な味を引き出す料理人。季節の果樹を使ったジャムなどの加工品や香味野菜のオイル漬けなど幅広く保存や加工を研究している。最も畑に近い料理人。