【第1羽】なにを食べるくちばし?

庭しんぶん26号(2019年10月)掲載の「なにを食べるくちばし?」。何問正解しましたか? 庭しんぶんには掲載できなかった解説を、こちらに掲載します。どうぞお楽しみください。

問題
みんな少しずつ違う、鳥のくちばしの形。くちばしを見れば、その鳥が食べるものがわかります。どのくちばしが何を食べるのかな?

 

【答え・解説】

〈イスカ  松ぼっくり〉
交差した特別な嘴(くちばし)は、松ぼっくりの種子を食べるのにとても便利です。足でしっかりと松ぼっくりを持ち、嘴を松ぼっくりのカサの隙間に差し込むと、力強くカサをこじ開けて中の種子を器用に取り出して食べます。

 

 

〈オオルリ ー 虫〉
鋭く短い嘴は、空中で飛び回る羽虫や、葉っぱの裏、時には木の幹を歩く虫たちを器用に捕えることに適しています。時にはカラスザンショウの実など、木の実もついばみます。

 

 

〈メジロ ー 花〉
細い嘴を、花の奥深くに頭ごと突っ込み、蜜を舐める様子をよく見かけます。小さい虫を空中で捕えたり、クモの巣を集めて巣を作ったり、といった繊細な作業も、お手の物です。

 

 

〈オオモズ ― ネズミ〉
まるでタカのような頑丈な嘴で、昆虫やネズミ、小鳥を食べます。嘴の先端についた鉤爪(かぎづめ)は、獲物を引きちぎることに適していますが、足の力が弱いのではやにえにして食べることも。

 

 

〈ウソ ー 種子〉
太く短い嘴は、小さい種子を食べるのにとても便利です。堅い種子を割って食べるだけでなく、ナナカマドや野イチゴの仲間などの果実も嘴でついばみ、果肉の中にある種子を食べているのもよく見かけます。写真の様に、嘴に食べかすを付けていることも。

 

くちばしは手のようなもの

 こどものころ、誰しもが一度は、「鳥になって大空を自由に飛び回ってみたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。しかし、翼を手に入れた鳥たちは、それと引き換えに2本の前足を失いました。私たち人間は、2本の前足ー手で器用に箸(はし)を持って朝食を食べることができますし、パソコンの細かいキーボードを押すことだって簡単です。一方で、鳥たちは失われた前足の代わりに、嘴を使ってこれらのことを行わなければなりません。つまり嘴(くちばし)は、箸やフォークとして食べ物を食べる時に大切な役割を担うと同時に、時にはペンチの役割をして枝を折り、巣を組み立て、時には櫛(くし)の役割をして羽繕い(はづくろい)を行うなど、鳥の生活には欠かせないものなのです。

 進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンは、著書「種の起源(きげん)」の中で、自然選択(しぜんせんたく)によって進化が起こると述べています。自然選択とは、生存競争(せいぞんきょうそう)の中で有利な品種が生き残り、世代を経(へ)ながら変化していくことを指しています。この自然選択による進化を目の当たりにしたのが、進化研究を行った米国プリンストン大学のグラント夫妻でした。夫妻が20年にもわたり調査したガラパゴス諸島(しょとう)に住むダーウィンフィンチ類は、13種類それぞれの生態に適した嘴の形をしていました。サボテンフィンチの嘴は細くて長く、サボテンの種子を食べるのに適しているし、オオガラパゴスフィンチは大きな嘴を使って他のフィンチには割ることができない大きな堅(かた)い種子を食べることができます。何を専門に食べるのか、また、どういった生活を営(いとな)んでいるのかは、嘴の形によって決まっているのです。

 ガラパゴスフィンチに限らず、私たちは日常で出会ういろいろな種類の鳥たちの嘴を観察することで、その生態を知ることができます。たとえ初めて出会う種類の鳥であっても、その嘴の形や大きさを注意深く見ることで、その鳥の食べ物や暮らしぶりを想像できますし、嘴をどんな風に使っているのかを実際に野外で観察するのはとても楽しいものです。また、図鑑でその鳥の名前を調べる時にも役に立つことと思います。

 

先崎啓究・先崎愛子
道内を中心に全国を飛び回るフリーの鳥類調査員。現在、岩見沢市を寝ぐらに夫婦で活動中。
好きなタカはクマタカ(愛子)、チュウヒ(啓究)。道央鳥類調査グループ。