ごっこ遊びを支える道具
ごっこ遊びの研究を続ける
具材クラブの活動を一冊に
きっと幼い頃、誰もが経験したことがあるはずのごっこ遊び。こどもたちの「やってみたいこと」や「憧れ」を見つめ続けてきた保育実践が一冊にまとまりました。ごっこ遊びは、憧れの人の仕草をまねながら、その人になりきってたっぷり気持ちを使います。そんなごっこ遊びを支える道具をすべてお見せします。具材の見立ての幅広さや、調理しやすい形、素材、量、重さなど、実践を通して具材クラブが研究し続けている、具材の世界へようこそ!
基本
イメージに合わせていろいろな食材に見立てられる抽象的な具材です。ごはん、パン、麺など主食を中心に、ごっこ遊びのベースを支えます。他の具材と組み合わせで、変幻自在。
彩り
基本の具材を引き立て、より具体的な料理に変化させます。ケーキの土台に赤をのせたらイチゴのショートケーキ。緑をのせたら抹茶ケーキ。こどものイメージをわかりやすく具体化。
シンボル
見立ての幅は狭いですが、ラーメンのなると、いなり寿司の油揚げ、餃子の皮など、グッとリアリティが増す具材。こどもたちがイメージを共有するのをサポート。
道具
フライパン、せいろ、寿司下駄、コック帽など、具材の周辺にある道具も大切。道具を丁寧に揃えると、具材が料理になります。そばをせいろに盛ることで麺はたちまちざるそばに。
大好きなお母さんの
手料理を再現する
お母さんの手料理は、こどもにとっては魔法のよう。自分のためにつくってくれるという喜びの体験でもあります。お母さんのような言葉、仕草、道具、手順。それはもうよく見ているなと唸るほど。ごっこ遊びでは、料理しながら、誰かの気持ちになって遊びます。自分が経験した心地よい体験を、もう一度味わって確かめているみたい。普段はやらせてもらえない包丁や火も遊びの中では自由自在。
抽象的な形、
こどもが自由に想像する
見立ての幅が広い具材を中心に掲載しています。白の毛糸であれば、ご飯やクリーム、牛乳など、こどもたちの想像に合わせて自由に変化します。具材をつくる時に大切なのは、「こどもたちがやってみたいこと」が叶えられること。大人がやってほしいことをさせるための道具にならないように気をつけます。こどもの想像力や経験、気分に応じて、幅広く見立てられる具材を用意すれば、大人の想像を超えて具材が変化し始めます
誰でも簡単につくれる
身近にある素材で、誰でも簡単につくれます。お母さんも、お父さんも、保育士も、お裁縫のプロではありません。遊びのプロになれるように、限られた時間の中でつくりやすいものがいい。ある程度量が必要なものは、数人でできると早い。身の回りにある材料に普段から目を光らせて、遊びの道具にならないかと、知恵を絞るヒントを詰め込みました。
子どもの生活と遊び研究会
「子どもの生活と遊び研究会」は、育児と遊びについて研究することを目的に、2006年に発足しました。講演会の企画・開催や、テーマ別のクラブ活動を中心に活動しています。趣旨に賛同した保育園と幼稚園が、公立、私立の別に関わらず参加し、継続的に学び、真に保育に役立つ研究・研修を実施しています。
具材クラブは、そんな子どもの生活と遊び研究会のクラブ活動のひとつです。子どもたちの遊びを助ける具材研究を続けて10年。ごっこ遊びの面白さは、お店屋さんごっこだけではなく、調理や遊びの「過程」にあることに気づき、具材の見立ての幅広さや、調理しやすい形、素材、量、重さなど、実践を通して研究し続けています。
具材クラブの運営を担当しているのは、札幌市豊平区にある東月寒保育園。1年に3回、クラブに参加している園が集まり、各園での実践や子どもたちの遊びの様子を報告し合い、保育者の工夫と子どもへの関わりを学びます。また、新しい具材の提案や、具材のストックづくりを続けてきました。10年間の実践で生まれた具材は、子どもの遊びの質を変え、保育活動に豊かさを与えてくれています。