cholon

こどもと、仕事と、洋服と。

庭ビルで販売しているスタイとエプロンの作者、佐々木智子さん。洋服と雑貨のお店cholonの店主であり、7歳の男の子のお母さんです。好きなことを仕事にしながら、子育てするってどんな生活なんでしょう。お話を伺いました。

庭:ものづくりを始めたきっかけを教えてください。

T:私の母はものづくりが得意な人だったんです。編み物の先生で、幼い頃はよくお洋服を作ってくれました。見よう見まねで私もお裁縫を始めたんです。そこからは独学。実用書を読みながら好きなものを作ったり、高校では家庭科クラブに所属して顧問の先生にいろいろ教わりました。フリーマーケットや蚤の市がある度に友達と出店して、それを見た4丁目プラザの担当の方が「お店やってみる?」って声をかけてくれたんです。4丁目プラザの自由市場に最初に出したお店は、端から端まで手が届くぐらいの狭さでした(笑)。

庭:その後cholonへはどう繋がるんですか?

T : ベトナムとの出会いがきっかけですね。1996年の24歳の時に、ベトナムに旅行に行きました。そうしたら、もう、一目惚れ。空気感や、熱気や、混沌とした感じがすっごく楽しかった。自分が生き生きするのがわかりました。そして何より、ベトナムは作りたいものを作れる街。例えば洋服だったら、アオザイの仕立て屋さんに布を持ち込むと数日で洋服を仕上げてくれます。紙や木、ブリキ、アルミ素材なんかを使ったものも作れました。自分のお店のオリジナル製品を作る選択肢がたくさんある、そこが1番楽しかったなと思います。翌年1997年に札幌の一閤ビルと言う事務所ビルの3階でお店を始めたんです。それがcholonの始まり。そこから10年間は1ヶ月おきにベトナムに通い続けました。

庭:今のcholonのスタイルになったのは?

T:しばらくはベトナムで生産したものにこだわっていましたが、年齢を重ねるとともに好きなものの幅が広がって、その頃にパルコにも出店することが決まったので、パルコ店をアジアのテイストのお店にして、一閤ビルのお店をナチュラルな雰囲気のお店にしたんです。そこで今のcholonのテイストを立ち上げた。一時期はパルコ店と東京店で3店舗を営業していました。ベトナムやタイに買い付けに行って、深夜便で帰国して、そのまま寝ずに東京店に出勤したりして(笑)。とにかく動き回っていました。

庭:タフですね……。自然に突き動かされる感じですか?

T:そうそう。特に仕事とも思っていなくて、自分がやりたいことや生活全部がお店に繋がっている感じですね。休みはなかったけど、欲しいとも思ってなかった。  

庭:2014年にcholon全店を突然閉店されました。どうしてですか?

T:ひとことで言うと、育児とお店の両立が難しかった。こどもは可愛いし、一緒に過ごしたい。でも、息子が生まれるまではお店に100%全力を注いでいたから、両立させるためにほどほどでやろうと思うんだけど、うまくいかなくて、体調も気持ちも沈んでしまいました。

庭:いざ子育てとなると、想像とギャップがあるんですね。

T:そうですね。深夜まで保育園に預けていたこともあったけど、こどもが眠ってから迎えに行くような生活で、長くは続きませんでした。一度お店を閉めて生活も仕事も見直したいと思ったんです。

庭:そして、再開を考えたのはいつからですか?

T:2014年にお店を閉めた後も何かものづくりには関わっていたくて、cholonでも製品を扱っていたタイ・チェンマイのブランド「バーンロムサイ」で、商品企画のお手伝いをしていました。子どもも連れてチェンマイへ何度も行きました。4年くらい経って、子どもも小学生になる頃、また自分のものを作ろうかなと思い始めたんです。実店舗を持つのは少しハードルが高いのでオンラインストアから始めようと思って、ひとつずつ自分の手で作って、写真を撮って、オンラインストアに公開するところからスタートしました。

庭:再開後、cholonは変わりましたか?

T:変わると言うより、お店を始めた最初の頃の初心に戻っている感じです。雑貨はアジアのあちこちに出かけて市場や問屋を回り買い付けをしています。アクセサリーは買い付けしたパーツを組み合わせて作るものが多いです。洋服は以前は生産量が多かったのでほとんどを縫製工場で作っていましたが、今は自分で縫ってそのままお店に並べるものも増えました。定番の商品は小樽の工場へ依頼しています。規模が小さい分、自分で手を動かして作れる、今はそれが楽しいです。

 

庭:こども用の「庭エプロン」と「庭スタイ」も智子さんの手作りですよね。

T:もともとは息子のために作っていたんです。以前庭しんぶんでも紹介しましたが、こどもサイズの小さいハンカチや、絵の具バッグなど、必要なものはまず自分で作るのが習慣です。こどもが食べこぼしをする時期に、「もう少し大きなスタイがあるといいな」と思って、袖を通すタイプのエプロンを作ってみたんです。ベストみたいな感じで、お出かけにもそのまま着られてかわいいんですよ。袖を通すからずれにくいし、食べこぼしもしっかりカバーできます。素材は、肌触りの良いダブルガーゼ、ノンホルマリン加工の素材を選んでいます。

庭:cholonは今年、どんな展開をする予定ですか?

T:5月14日〜6月8日は庭ビルで販売会を行います。そのあとは7月中旬に東京のイトノワライフさん、7月末からヒシガタ文庫さんでも予定しています。

庭:今後のcholonはどうなっていくのでしょう?

T:オンラインショップもスタートしましたが、やっぱりお店で直接お客さんと話したり、反応が見られるのが楽しい。ただ、自分のペースで進める方が今はいいかなと思っているので、実店舗はまだ先ですね。これからどんな形でやるのかを模索しているところです。

 

cholonの旅する雑貨店
2019年5月14日(火)〜6月8日(土)