クリスマスの朝、食べ物も貯金も、すべてなくなってしまった。そして、大切なものを手放して手に入れたなけなしの現金も、心無い人にかすめ取られてしまう。生きるための望みをすべて失ってしまったおばあさん。彼女にできる残されたことは、必要なものが与えられるように 〈願う / 祈る〉ことだけ。どんなに努力をしても、自分の力だけではどうすることもできないことがあります。でも、願いと祈りは自分がやめないかぎり、誰にも奪われることはない。この絵本、文字がひとことも書かれていないけれど、ゆっくりと確かな言葉で語りかけてくれるんです。文字がないのに語りかけてくるって不思議ですよね。そういう力のある絵本に出会えるとうれしくなりま す。こういう絵本には、「生きることの喜び」が語られています。少し難しく言うと、〈生きることへの素朴な肯定と願い〉 が込められている。君たちの周りにある絵本や物語の中には、そういうものがありますか？ これはとても大切なことです。 ピーター・コリントン

1日がたっぷり詰まっています。文字はとっても少ないのに、なかなか読み終わらない。 毎日、いろんなことを選んで生活してるんですね、ぼくたち。今日は何をしようかな、どこに行こうかな、どんな服を着ようかな、どんなものに出会うかな？1日の中にはたくさんの出会いが詰まっています。小さな虫を眺めてみたり、お花の匂いを嗅いでみたり、お風呂に潜ってみたり、いつもはやらないことに挑戦してみたり。無数の選択肢と可能性が広がっている。いつもとおんなじでも、いつもと違うことをしてもいい。それは君が自由に決められること。それに、今日という日は、ぼくたち自身がつくり出す〈いちにち〉が集まっているんだ。いろんな人の1日が今日もやってきます。すてきな1日でありますように！ ジュリー・モースタッド 作 / 石津ちひろ 訳

本当のことを伝えたら、人を傷つけちゃったってことがある。その人にとっては受け入れられないことだったんだ。どんなに思いやりをもって、丁寧に伝えたとしても、うまくいくとは限らない。人の気持ちって難しい。だからって、傷つけないように全く思ってもないことを言うのは嘘になる。嘘はもっとよくない。嘘をつき始めると、そのうち自分で自分に嘘をつくようになる。そうすると、相手を傷つけることはなくても、自分自身を深く傷つけることになる。自分で自分の気持ちがわからなくなってしまうんだ。どうか気をつけてほしい。人を傷つけるのはよくないこと。でも、本当のことを伝えるのは大切なこと。勇気がいるし、とっても難しいけど、そこから生まれる関係は心地がいい。自分が感じている本当のことを相手に伝えること。そこにはその人への優しさが必要なんだ。僕は優しくなりたいなって思うし、そのやさしい関係を動植物たちとも結べるといいと思っている。 パトリシア・C・マキサック 文 / ジゼル・ポター 絵 / ふくもとゆきこ 訳

この絵本に出会った時は衝撃でした。ページをめくった途端にアンジュールから目が離せなくなりました。線が現れると同時に物語が 浮かび上がってくる感じ。そして、真っ白な紙の上に、鉛筆一本でさ、平面なのにさ、世界が浮かび上がってくるんですもん。 ガブリエル・バンサン

フランスとスペインにまたがるバスク地方に伝わる少し怖くて不思議なお話。主人公が船長というのもこの地方ならでは。15世紀の大航海時代には、バスク地方の優秀な船乗りたちが大活躍したそうです。絵本の中の船乗りたちもボーダーのバスクシャツを着ていますよ。 ふしみみさを 文 / ポール・コックス 絵