こどものまなざしで語るということ
少年クロが過ごした8歳から15歳までの8年間。読み終わったあとに、作者のペルフロムさんのご主人の小さい頃の体験が元になっていることを知って、この物語に描かれているクロのまなざしのリアリティの理由がわかったのでした。食料を手に入れるのに必死で、生活することすらギリギリの毎日。戦争がスペインをぐちゃぐちゃにして、不条理なことばかりあふれ返る日常の中でも、たくましく生きるクロの姿に、こどもが持つ強さと、こどもが抱える弱さがそのまま描き出されている物語でした。家族を支えるために学校にも通えず、いろんな仕事に就きながら、より稼ぎのよい方法を自分で考え、遠くの町まで陶器を売りに行ったり、薬きょうを集めて転売したり、大人たちの中で、自分にできることで暮らしを立てる。大人たちの中で、自分にできることで暮らしを立てる。大人たちと社会にゆがんだ部分や、恐ろしいところをきちんと知らないと、すぐにだまされちゃうんですよね。もしかしたら、そういうことって大人よりもこどものほうが見抜くことができているのかもしれない。
エルス・ペルフロム 作 / 野坂悦子 訳
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