月刊絵本2019年9月号のご紹介


 

こどものとも0.1.2『まあるくなーれ』
鈴木智子・さく
福音館書店 / 2019.9

いろんな生き物たちが、掛け声をかけるとコロンと丸くなります。シンプルに2場面で構成されており、次のページを開くのを期待させてくれます。「まあるくなーれ まあるくなーれ いちにのさん」という掛け声が呪文のように、耳に残ってついつい唱えてしまいます。丸くなる動作って、探してみると周りにたくさんあるんですね。お腹が痛いときもくるっと丸くなってお腹押さえたりしますし、お腹の中の赤ちゃんもまんまる。いろんなところで使える呪文なのかもしれませんよ。乳児は読むのではなく、聞いた言葉をそのまま覚えて繰り返します。絵本に出てくる言葉も、まだ文字というものがあることも理解していないでしょう。ですので、絵本を語りかけてくれる大人の声は絵と一緒に彼らの中に響きます。文字という仕組みを理解する前の、とっても貴重なひと時だなぁと、2歳の娘に絵本を読んでいて思います。彼らにとって言葉と呪文は同じようなものなのかもしれません。

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こどものとも年少版『うみのメリーゴーランド』
はらだそのこ・さく
福音館書店 / 2019.9

メリーゴーランドに乗ったのはいつですか?うみの1円は貝殻ひとつ。このメリーゴーランドは、貝殻ひとつで乗ることができます。 丘の上で自由に馬とかに乗って駆け回るのも憧れますが、海の上をイルカや亀に乗って自由に動き回れるのは、もっとワクワクします。ちょっと不思議でファンタジックな物語。こどもと物語を楽しむときに、「この物語はどう感じるんだろう?」と様子を探りながら、読んでみることがあります。思っていた場面と全然違うところで強い反応を示したり、よくわからないところで楽しんでいたり、読んでみて気がつくことがたくさんあります。絵本を楽しむことって、同じ時間と物語を誰かと共有するするということ。そして、そのことを一緒に楽しみながら、お互いに感じたことを交換 / 交流しているのかもな、と。1人で読むのと、誰かと読むのでは違うし、ましてやお父さんやお母さん、いつも一緒にいる保育士に読んでもらうと絵本の味わいがまた違います。

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こどものとも年中向き『プールほいくえん
岩井真木・文 / 三宅信太郎・絵
福音館書店 / 2019.9

あっつい日なのに、保育園のプールが故障中。こどもたちは、楽しみにしていたプールに入ることが出来ません。それじゃあ、保育園の中をプールにしてしまおうと、室内を締め切ってから、全部の蛇口をひねります。水はどんどんたまって、いつもの部屋は水の中。泳いだり、浮かんだり、お昼は流しそうめんをします。水中でやってみたいことはたっぷり。僕もかつて想像したことあるなぁ、こういうの。現実には出来ないことも、想像の世界では楽しむことができる。そして、絵本の場合は、同じイメージでその空想の世界を共有 / 共感することができます。そうじゃないと、こどもたちの頭の中にある空想を共有したり、理解したりするのは至難の業。絵本は、こども同士のイメージを結び合せて、遊びを生み出すこと。大人にとっては、こどもの心をのぞく窓みたいなもの。あっつい日が続いてますが、保育園の中をプールにして、潜ったり浮かんだりして遊びましょう。

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こどものとも『ばあちゃんがいる』
伊藤比呂美・文 / MAYA MAXX・絵
福音館書店 / 2019.9

「だいじょうぶ、つながっていくんだから。みんなに。もりに。こいつに。おまえに」。これは、ばあちゃんが旅立っていくとき、クライマックスでのセリフです。ばあちゃんは、どこに旅立っていったのか。老いるということ、そして死ということが、MAYAさんのおばあさんとの経験を元に、伊藤さんの文章、そして、MAYAさんの踊りだしそうな絵で表現されています。ちょっとこどもに読むのドキドキするしますが、絵本になっているから、この世界をこどもと分かち合うことができる。そのことに「ありがたいな」と思い、絵本の楽しみは奥深いなと思わされます。7月27日から、清須市はるひ美術館でMAYAさんの原画展が始まり、駆けつけるとなんとうれしいことに、この絵本の原画も見ることができました。MAYAさんの絵がそりゃもう最高です。まずは、見かけたら手にとって、この世界を体感してください。

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ちいさなかがくのとも『ない!』
名久井直子・さく / 井上佐由紀・しゃしん
福音館書店 / 2019.9

普通は、何もないところに何かが出てくるパターンの絵本になると思うのですが、今回のちいさなかがくのともは、「ない!」ってことを探求してきました。かなり、実験的な1冊だなと思います。あったものがなくなる。そこに何があったのか?なくなるってちょっと怖いなぁと思いながら、いろんなことを想像してしまいました。何もないところに、何かが登場する場合は、どんなものでも登場し得るので、想像がぐっと広がりますが、「ない!」っていうのは、あるものがなくなるだけなので、次の場面は想像できるんですよね。なくなるんだなぁって思いながら、なくなった場面が展開し、そして、何があったのかなぁ?と、そこに起こったことを少し考えたりするのでした。こどもたちは何を感じるのでしょうか。「ない!」ってことをどうやって楽しむかなぁ。

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かがくのとも『よるのいけ』
松岡達英・さく
福音館書店 / 2019.9

夜の暗闇で懐中電灯を片手に虫たちを探索したことありますか?僕は父と兄弟たちと、陽が落ちて暗くなってから、夜の野原にキリギリスを探しに行ったことがあります。棒の先に長ネギを縛り付けて、音を頼りにキリギリスの場所を探ります。耳を澄まして鳴き声の主にたどり着くと、脅かさないようにネギを差し出して、そこに乗り移るのを焦らずに待ちます。懐中電灯の明かりを向けると昼間とは全然違う彼らの姿に見えるんです。ネギに乗り移ったらもうこっちのもの。スルスルと棒を引いて、手で捕まえてカゴに入れます。この絵本は、夜の水中まで探索してるので、夜の水辺はちょっと怖いけど、挑戦してみたいなと。夜の闇を歩きながら、そこで静かにしている生き物たちにちょっかいをかけるって、なかなか面白そう。夏の間に、息子と夜に虫たちの様子をのぞきに行きたくなる素敵な1冊です。

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たくさんのふしぎ『一郎くんの写真』
木原育子・文 / 沢野ひとし・絵
福音館書店 / 2019.9

どんな人にも生まれて死ぬまでには物語があるんだなぁ、と。戦争に行く人に、日の丸に寄せ書きをして、お守りのように託した日章旗。その旗に書かれた「一郎くん」を探して、新聞記者の木原さんがあらゆる手立てを尽くして、情報を集めて、とうとう「一郎くん」にたどり着きます。心に強く印象に残る1冊でした。

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母の友 特集「"おもしろい絵本"ってどんな絵本?」
福音館書店 / 2019.9

いやー、特集テーマがいいですね。そして、松岡享子さんのインタビュー、さらには、石井桃子さんの記事もあり、母の友の凄みを感じます。石井さんの文章のタイトルに「日常を大切に」という一節があり、深く頷き、今の自分の生活がどこか間違っているのかもしれないと、立ち止まって考えてしまいました。いま、ここ。そう、今手に取れる毎日がとっても大事。母の友は、子育てにまっすぐ向き合うことを助けてくれます。

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